被災地に新エネルギー特区を、地域主導型電力網のモデルに
負担感を共有できる体制を
次世代のエネルギーシステムを展望するとき、新エネルギーとともに重要なキーワードが「分散型」である。これに対し、これまでの電力体制は大規模集中型。原発など大型発電所を需要家から遠く離れた地域に建設し、広大なエリアに送電線を張り巡らせて供給する。
日本総合研究所創発戦略センターの井熊均所長は、「これからは需要と供給双方の分散化が必要」と言う。大規模集中型は燃料の利用効率が低く、送電ロスも大きい。今回の原発事故で露呈したようにリスクが広範囲に拡大する危険性を持つ。
一方、今後自然エネルギーを最大限に活用していくためには、大規模集中型は適さず、分散型への再構築が不可欠である。自然エネルギーは高コストで安定供給に適さないとの指摘がある。だが、これはこれまで大規模集中型偏重の政策がとられ、そのため自然エネルギーや分散型システムの技術が十分に発達せず、また適切な利用方法も体系化されなかったことによるところが大きい。
井熊氏は「分散化することで需要家主導のエネルギーシステムに変革できる」とする。電源を小口にすればするほど停電などに対してのリスクがヘッジできる。さらに、「地域のエネルギーは地域で作るという意識を持つことが肝要」と指摘する。
分散化、地域主導、そして自然エネルギーの活用、これらが東北復興へ向けた新エネルギー政策に求められる前提条件となる。
さらに、これは東北だけでなく、全国民のエネルギーに対する意識変革を促す。原発など大規模集中型電力体制がもたらした弊害として、「NIMBY」(Not In My Back Yard=自分の裏庭には入ってほしくない)の助長が挙げられる。