半導体業界が「就活生」に硬軟自在の猛烈アピール 展示会には企業ブースツアーやグラドルが登場

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ツアーで各社に与えられた説明時間は1社につき10分。各ブースの説明担当者はつい話に熱が入ってしまうが、やはり時間は足りないようだ。案内役が学生に「次、行きましょう」と伝えると、説明担当者は去っていく学生を苦い表情で見送っていた。

「検査や計測機器のメーカーに興味がありましたが、ぜんぜん時間が足りなかったですね。でも今まで知らなかった企業の説明を聞くことができて満足です」

広島にある大学院の博士課程で画像・データ解析を研究しているという男性はツアー終了後、そう言って会場を後にした。中国の出身で、現地で一度就職した後に日本の大学院に入学したのだという。

学生たちの全体的な満足度は概ね良好。終了後のアンケート調査では、「ほかの就活イベントでは見られない製造装置などの実機を見られた」といった声が多く寄せられたという。半導体業界に特化した大規模な展示会の魅力のひとつといえそうだ。

長く続いた人減らしで年齢構成がいびつ

半導体関連業界の各社にとって、人手不足は今後の成長を左右しかねない死活問題。新卒採用は重要だ。

というのも、いまや日本では半導体工場が新設ラッシュ。台湾・TSMCによる熊本進出やラピダスの北海道工場建設に加え、パワー半導体各社の増産も活況。装置・材料メーカーの設備投資も、半導体産業の育成に力を入れる政府の巨額支援を背景に過去最高水準にある。

ただ、「業界全体として長らく人を減らしてきたこともあり人材の年齢構成がいびつ。中途採用でなんとかしようとしてもそもそも人がいない」(前出の下村氏)というのが実情だ。

1990年頃には世界シェア約5割と栄華を誇ったニッポン半導体は長く凋落が続き現在のシェアは10%前後。1999年に19万人以上いた半導体メーカーの従業員数は、2022年には8.5万人にまで半減した。最先端半導体の国産化を目指すラピダスに集うエンジニアも、50代以上が大多数だという。

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