ドイツ人が「無料でも」お茶や水の提供を断るなぜ サービスを受けるのが当たり前になった日本人

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ヨーロッパ企業はアメリカ型の「株主重視の利益至上主義」ではない。特にドイツでは多くのステークホルダーの中でも「従業員」「社会」を重視した経営を行う企業が多い。

筆者が勤めていたシェフラー社は1945年にシェフラー家の兄弟が創業した会社だが、その兄弟が「戦後の焼け野原のドイツの復興のために起業した」もので復興のための資材の製造や地域の雇用を生み出すことを第一義に掲げていた。

今でもその精神は受け継がれ、適正な利益を生み出すことで永続的に雇用を生み出し、社会貢献することを経営の根幹に置いている。生み出す製品やサービスが利益を生むことは企業理念の追求のためには不可欠であると考えている。

必要なコストを転嫁するのは自然なこと

従って、製品やサービスの提供に必要なコストを価格に転嫁することは自然なことであり、その上で市場での競争力がなくなれば製品やサービスのポートフォリオを見直し事業の組み替えを絶えず行うのがつねだ。必要なコストをバリューチェーン上にある会社や人に押し付けてまで、量や質、サービスの向上を追求しようという考えはない。

筆者は2019年までドイツ企業に勤めていたが、出張に行った時や、ドイツ人の同僚・取引先とのやり取りから、駐在当時のドイツの風潮や人々の意識、傾向は今でも存在すると感じる。

若い人たちはネットで情報を集めたり、モノを買ったりしているが、「大量消費」の傾向は見られない。ドイツでは、シュレーダー政権時代に国の財政健全化を推し進め、その際には国を挙げて「節約プログラム」を推進し、財政健全化を図っているなど、財政に見合った生活は当然のこととして受け入れられているのだろう。

今まで享受してきた「便利さ」について、コストやリソースを念頭に何を諦め、何を今後も残していくのか。日本は「便利さの断捨離」をするタイミングを迎えているのではないか。

四元 伸三 きづきアーキテクト 匠/シニアカウンセラー

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よつもとしんぞう / Shinzo Yotsumoto

1954年岡山県生まれ。1977年、早稲田大学理工学部機械工学科卒、神戸製鋼入社。1985年から4年半ドイツに駐在し異文化におけるビジネスの醍醐味を経験。1994年ミシュラン(フランスのタイヤメーカー)の日本法人に転職、トヨタのグローバルアカウント責任者に就任。2006年米国TRW(自動車部品メーカー)の日本法人代表、2012年独シェフラー(精密機器メーカー)の日本法人代表として日系自動車メーカーとのグローバルビジネスの拡大を指揮、2020年独ローランドベルガーを経て現在はフリーランスの経営コンサルタント。きづきアーキテクト(株)に顧問として参画。異文化を融合し新しい「ものの見方・考え方」を生み出すことをテーマに活動。

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