冷ややか目線と期待、「ソニー・ホンダ」が貫く我流 1年の取り組みで見えた実験場としてのクルマ
SHMの川西泉社長は以前から、AFEELAのスタイルについて、特定のキャラクターを感じさせないことを意識していると話していた。
高機能携帯電話がソフトウェア・デファインドなデバイスであるスマートフォンに変化する過程で、まるで真っ白なキャンバスのようにシンプルなデザインへと変化したように、自動車も”SDV”になることでデザイン価値が変化すると見ているのだろう。
このようにとらえたとき、AFEELAの試作車両は一義的には、高性能なセンサーを多数搭載し、そこから同時並行的に集まってくる膨大なデータを軽々と処理する半導体とネットワークを車体に持つ「センサーカー」だ。
膨大な情報をセンサーで集め、5Gネットワークを通じてクラウドと結びつき、センサーからの情報を並列処理しながらリアルタイムにさまざまな機能を実行できるハードウェアのプラットフォーム。それがAFEELAということである。
テスラのEVと決定的に異なる点
そのコンセプトは、よく比較されることになるだろうテスラとも方向性が異なる。
例えばセンサーで集めた情報の最大の活用先は、ADAS(先進運転支援システム)だ。テスラは高コストなLiDAR(レーザースキャンによる空間計測センサー)の採用を嫌い、また条件によって拾えるデータが不安定になりがちなレーダーも使わず、現在はTesla VisionというイメージセンサーのみでのADASへと舵を切った。
合理化の一環とも言えるが、センサーの数を削ってしまってはソフトウェアによる進化は期待できない。
一方のAFEELAは45個というセンサーの数が注目されがちだが、フロントガラス中央上部にあるLiDARはもちろん、事前イメージ処理回路なども内蔵できる多数のイメージセンサー、レーダーなどを複合的に扱う仕組みそのものに対して大きな投資をしている。
一般的な自動車は発売時点の機能や性能を目標に定めて作られるものだが、AFEELAはセンサーから集まる膨大な情報量をリアルタイムに並列で扱う処理回路も、発売後の発展も含めた目標設定がされている。ソフトウェア処理の基盤となることを意識しているから、隙間なく把握できる情報はすべて集めておけるようにしているわけだ。
これはSHMの川西社長の古巣でもあるソニー・インタラクティブエンタテインメントが作ってきたプレイステーションが、長期的にソフトウェアによって進化していく基盤であることを意識していることに似ている。
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