65歳以上の「食べられない」を軽視できない理由 BMIをまめに確認、食べる機能の老化にも注意

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嚥下の機能が低下し、誤って気道に唾液や食べ物が入るのは「誤嚥(ごえん)」です。誤嚥は、高齢の人が命を落とす病気、誤嚥性肺炎の原因として、ご存知の人も多いかもしれません。

高齢社会になって、誤嚥性肺炎がクローズアップされ、「食事中にむせたら危ない」と注意する人が増えました。確かに、むせるのは誤嚥を防ごうとする体の反射ですから、むせが頻繁に出るようになったら、嚥下機能が衰えているサインと言えます。

摂食〜嚥下のあらゆる機能を「しっかり使う」

ただし、一般的には誤嚥(嚥下機能の低下)より先に、摂食機能の低下が目立つことが多いです。はじまりとして多い症状は「硬いもの×」。食生活が「柔らかいもの」に偏っても、別の物が食べられるうちは〝問題〟とは思われにくいのです。

肉や野菜を食べないでいると、嚙む力はさらに弱くなり、次々と好物が食べられなくなることで、食欲低下や低栄養、ひきこもり、孤立といった問題に発展することもあります。

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予防のためには毎日、摂食~嚥下のあらゆる機能を「しっかり使う」が大切!

私が栄養ケアで関わっている歯科では、嚙む力が衰えたお年寄りに「黒豆の入ったおせんべい」を出して、嚙みしめる練習をしてもらっています。

嚙めないから柔らかいもの、ではなく、嚙む力を取り戻す練習をする。おいしいおせんべいだと、みなさん食べたくて、頑張って食べます。黒豆の皮が歯間にはさまったりして、難易度は高いけれど、おいしくて、みんなが一緒だと案外、食べられてしまう。

ギブアップする人には別の方法を提案しますが、練習できる人には、疲れない程度に、ゆっくり嚙みしめてもらっています。

川口 美喜子 医学博士、大妻女子大学家政学部教授

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かわぐち みきこ / Mikiko Kawaguchi

専門は「病態栄養学」「がん病態栄養」「スポーツ栄養」。島根大学医学部附属病院で栄養管理室長を務め、NST(栄養サポートチーム)を立ち上げるなど、“食事をとおした治療”に積極的に参加。現在は、大学で後進を育てながら、地域医療のパイオニアである「暮らしの保健室」(東京都新宿区・江戸川区)や、がん患者とその家族が訪れるマギーズ東京(東京・豊洲)などにて、栄養指導、栄養ケアを行う。病気や日々の暮らしに問題を抱える多くの人のために、卓越した栄養学の知識を具体的な食事に落とし込んで支援している。

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