スタッフがゴミの上に立つと、すでに頭が天井につきそうだ。まずは生活ゴミを掻き集め、ゴミ山の上ずみを取り除いていく。その下には新聞や紙類のゴミが埋まっており、使い終わった湿布薬も交っていた。
作業も3時間を超えるとひとつの和室は空になり、息子が小学校に入学するときに買ってあげたという勉強机が出てきた。片付けが進むにつれ、写真のアルバムなど昔の思い出の品がゴミ山の中から発掘されていく。すると、母親の表情も心なしか明るくなっていった。
「新しいベッドを息子が買ってくれるねん。どこに置こうかな」
それから2時間後、計5時間の作業ですべてのゴミが部屋の外に運び出された。わずかに残った荷物の下には、ボロボロに擦り切れた畳がある。ふすまも穴だらけだった。
母親の「夢」が叶った瞬間
「きっかけをくれた息子には感謝しかない」
見違えるほどきれいになった部屋を見て、母親はそうつぶやいた。
「床を見たのは10年ぶりくらい。足が悪い中、トイレに行くのにもゴミを跨いでいっていたから。でも、モノがなくなっていくのを見るのは苦しいんですよ。思い出のモノがなくなるなあと。でも、息子にもちゃんとした生活をしてもらいたいと思ったから、しゃあない。これで息子もたまに泊まったりできるかな」
15年越しの母親の「夢」が叶った瞬間だった。
「しばらくベッドも届かないので、それまでどこで寝ようかな(笑)」
母親はこれから始まる新生活に希望を持っている。
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