約30年前、息子が生まれたことをきっかけに家族3人でこの家に暮らし始めた。しかし、約15年前に父親が他界。そのショックと、もともと母は片付けが苦手だったことも重なり、すぐにゴミ屋敷になってしまったという。それから15年間、この状態が続いている。
施設の職員に息子が出したSOS
施設の職員が異変に気付いたのは3年前だった。男性が一時的に実家に帰り、施設に戻ってくると、体に虫に噛まれたような跡がたくさん付いていたのだ。男性に「この跡はどうしたのか」と聞いても、毎回うやむやにされてしまう。
しかし、男性が就労支援を終え、一般企業への就職が決まったことを機に、本人から「実家を片付けたい。助けてほしい」と相談を受けた。施設の職員の男性がそのときのことを振り返る。
「異変に気付いてから家を訪問するまでに3年かかりましたが、そこからは早かったです。息子さんも一般企業に就職されたことで実家に帰る機会も増えます。そこで快適に過ごしてもらうためにはまず家をきれいにしなくてはいけませんでした。15年培ってきたゴミの中にも思い出はあると思います。そういうことも踏まえて、一緒に片付けてもらえたらと思っていました」
職員からの依頼を受け、見積もりに向かったのはイーブイの社長・二見文直さんの弟である信定さんだった。信定さんは兄と一緒にイーブイを営んでいる。
「私もここまで状態の悪い部屋を見たのは久しぶりだったので、職員の方はかなりショックを受けたはずです。何百匹というゴキブリが部屋中を這っていたので、一晩でもここで寝れば何か所も噛まれてしまうでしょう。でも、一人で住んでいるお母さまに悩んでいる様子はなかったです。自分ではどうしようもないこともわかっているし、なかば諦めているような状態でした」(信定さん)
母親は15年という長い月日によって、「悩む」という段階を通り越してしまったのだろう。
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