「ゴミ屋敷のくぼみに寝る」母親が救われた瞬間 息子の依頼で家が片付けられ新生活が始まる

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母親は和室のゴミ山にできたわずかな「くぼみ」で生活をしていた。数年前にクーラーが壊れてしまい、夏は扇風機だけで暑さを凌いでいた。制汗スプレーを体にかけて眠るが、暑さで2~3時間おきに目を覚ましていたという。冬もかなり寒かったはずだ。その「くぼみ」の前で母親が話す。

「旦那がいるときは掃除もしていたんですけど、亡くなってからしなくなったんですよね。もともと片付けが苦手だったので、もう止まってしまったんです」

赤い円で囲まれた「くぼみ」が母親の就寝スペース(写真:「イーブイ片付けチャンネル」より)

夫の死のほかに、部屋を片付けられなくなった理由がもうひとつある。母親は4年前に脚を怪我してしまった。以来、脚を引きずるようにしないと歩けなくなってしまったのだ。ひとつのゴミ袋を家の外に出すことすら身体的にも精神的にも大きな負担となり、部屋がゴミだらけになった。すぐに自分ではどうすることもできないラインまで、ゴミが積み重なっていった。

「怪我や体を悪くしたことでゴミ屋敷になってしまう人は多い」と信定さんは言う。

「日常的に極力体を動かさないようなると、途端にゴミや荷物は溜まっていきます。それがある一線を超えてしまうと、もうどうしようもありません。本当にひとつの小さなきっかけで、ゴミ屋敷になってしまうんです。今まで普通にできていたことができないというもどかしさは、精神的に辛いでしょう」

母親も心のどこかでは「部屋を片付けたい」という想いがあった。

「2~3カ月に1回、家に帰るとゴミが全部なくなっている夢を見るんです」(母親)

ゴミの片付け費用を「自分が出す」

そんな母親の様子を見て、息子は「費用は自分が出すから全部片付けよう」と説得した。

片付けを行うイーブイのスタッフは全部で5人。3人が部屋の中のゴミを袋に詰め、バケツリレー方式で玄関に集めていく。そして、団地の5階にある一室から、残りの2人で外に運び出していく。集合住宅の場合、エレベーターまでの廊下が長かったり、駐車スペースまでの距離が遠かったりして、運び出しに時間がかかってしまう。この日の気温は30℃。全員汗だくになりながら、黙々と作業を続ける。

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