中越パルプ工業、「夢の新素材」を開発強化する訳 「セルロースナノファイバー」で農業領域を開拓
なぜ同社が開発したCNFが防除資材として効果を発揮できるのか。
同社によるとその理由は、CNFの製造方法にあるという。一般にパルプからCNFを取り出すときは化学薬品などを加えることが多い。だが、同社は化学薬品を使わずに、水の力を用いて木質繊維などを取きほぐす「水中対向衝突法(ACC法)」という手法で製造している。
ACC法で生産されたCNFは、「水と結びつきやすい親水性と、油と結びつきやすい疎水性という両方の性質を持っている」(ナノフォレスト事業部長兼東京営業所長の伊東慶郎氏)。
この「両親媒性」によって、「水をはじく葉面にも付着しやすい」「付着したCNFが葉面を親水性にして、病原菌に葉面だと認識させにくくする」という2つの効果が発揮され、病原菌の侵入を防ぐという。
さらに、同社は紙・パルプメーカーとして、針葉樹などの樹木だけでなく、国内産の竹を多く使っていることでもよく知られている。この竹を原料として生成したCNFはとくに両親媒性が高く、この強みを打ち出していく戦略だ。
農水省の認定が農業現場への普及・拡大に
国の動きも同社の取り組みを後押しする。
中越パルプ工業と丸紅のCNFを用いた新たな防除資材への取り組みが、2050年までの持続可能な食料システムの構築へ農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」の基盤確立事業として、2023年9月に認定を受けたのだ。
ここでは、2050年までに化学農薬の使用量を50%削減することが目標に掲げられており、CNFの農業現場への普及・拡大を見据えた実証実験の拡大と、販路の開拓の後押しになると見られる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら