日本人が知らない、ルーマニア鉄道の「20世紀感」 インフラ整備進まず残る「古きよき欧州」の面影
ブカレストの街を走る公共交通機関にも触れてみたい。重厚な石造りのブカレスト北駅から一歩出ると、駅前広場にはトロリーバスが走っている。ブカレストを走るトロリーバスは、ハンガリーのイカルス(IKARUS)製の車両が多くを占める。同社は冷戦時代、東欧各国に送り込まれる大型バスの大半を生産していた「名門バスビルダー」だった。ただ、すでに経営破綻しており、交換部品の確保は難しそうだ。
地下に目を転じると、地下鉄の「ブカレストメトロ」が走っている。車両こそ近年導入されたものだが、地上を走る鉄道インフラと同様、老朽化の色は隠せない。駅の造りは東側陣営各国の例に違わず、全ての駅のデザインが違うのが誇りという。
鉄道の近代化は進むか
冒頭で述べたように、欧州では鉄道の復権が著しい。ルーマニアもこうした波に乗り遅れてはいけないとばかり、政府が鉄道インフラ開発の戦略を策定している。2021〜2026年の6年間に近代化を目指す行動プログラムと銘打ち、高速鉄道の実現可能性調査の実施もこの中に含まれている。
2019年には、北駅の地下に他の線区と直通できるようなホームを新設し、首都の鉄道リンクを再構築するプランも発表されている。これは現在の頭端式ホームに乗り入れないことで、停車時間が長くなるスイッチバックを避ける狙いだ。ただ、市内交通ではない鉄道網が通勤・通学の足として使われていないブカレストにおいて、こうした駅改良プランが近い将来現実のものとなるかは見通せない。
インフラへのテコ入れが進まなかった結果、皮肉にも「欧州鉄道の古き良き時代」が実感できるルーマニアの鉄道。しかし老朽化の進展はいつか大事故へとつながる危険性をもはらんでおり、欧州連合(EU)の積極的な資金援助によって近代化と新たな発展に向けた取り組みも進められている。冷戦の終結から約35年、EUの東方拡大からは20年ほどが経つ。今後ルーマニアの鉄道界がどんな形で変貌していくか、その動きはこれからも引き続き追っていきたい。
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