日本人が知らない、ルーマニア鉄道の「20世紀感」 インフラ整備進まず残る「古きよき欧州」の面影
筆者は12月の平日日中、数時間にわたって同駅に滞在したが、入線するほとんどが電気機関車に牽引された客車列車だった。入線する電気機関車は、大半が冷戦時代の1980年代の製造で、中には元フランス国鉄(SNCF)の1970年代製の中古電気機関車もあり、現役で近郊列車牽引の任に当たっている。客車は機関車と比べると新しいが、中には元フランス国鉄の低床型近郊客車も見られる。
旧東側陣営に属しながらも、現在はドイツやオーストリアから次々と優等列車が乗り入れてくるポーランドやチェコ、ハンガリーの状況と比べると大きく立ち遅れていると言わざるをえないが、「前世紀の欧州の鉄道」の雰囲気を感じたい人々には魅力的に映るだろう。
「手作業で札を張る」駅の巨大時刻表
それ以外にも北駅構内にはさまざまな「昔の遺物」が残されている。近距離列車の乗車券はもとより、優等列車の指定券も自動券売機で購入できるものの、ルーマニアの人々には依然として現金を片手に有人窓口に並んで切符を買う習慣が残っている。窓口のつくりはこれまた前時代的で、出札口が20cm四方くらいの小窓になっており、ここを通してお金を渡したり、切符を受け取ったりする。マイクとスピーカーを通して出札係とやり取りする方法は、かつての中国でも同じような光景があった。
筆者が最も驚いたのは、北駅を発着する全ての列車(出発・到着)の大きな時刻表が小さな札を使った手作業でつくられていることだ。列車番号や時刻をはじめ、行き先や始発駅の名称が書かれた札がパネル一面にびっしりと張られている。
「昔の時刻表を歴史遺産として張っているのか?」と思ったが、よく見ると「2023年12月10日改正」との表示がある現行の時刻表と知り、その物持ちのよさに驚嘆した。ダイヤ改正時には全て手で付け替えているのだ。ただ、列車の出発案内ボードは、駅コンコース、ホーム上共に全て電光掲示板に代わっている。
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