ビートからS660へ
ビート生産終了から約20年後、2015年3月にホンダは、同じくミッドシップ・オープンスポーツの「S660」を発売する。基本的なパッケージングはビートと共通だが、エンジンはターボ化され、ミッションは6速マニュアルに加えてCVT(無段階変速式オートマチック)も用意された。
S660はターボエンジン化を図り、6速マニュアルやCVTを設定することで、誰もが乗れる軽スポーツカーになった。ちなみにビートは、5速マニュアルのみの設定で、高速道路ではエンジンが唸りを上げて苦しいし、オートマ限定免許では乗れなかったので、かなり尖ったクルマだった。そんなS660も2022年に生産を終えている。
ステアリングからダイレクトに操舵感
ビートとS660を比べると、生まれた年代も違うので、すべてにおいて進化していることは間違いない。ただ、ビートの開発者が追求した「操る楽しさ」は少し失われたようにも感じる。
ビートには、今では当たり前のパワステさえついていない、いわゆる“重ステ”なので、慣れていないと駐車ですら四苦八苦するクルマだ。だが、走り出せばステアリングからダイレクトに操舵感が感じられる。また速くないからこそ、街中で楽しいという感覚もビートが上のように個人的には感じる。
そんなビートは、総生産台数3万3892台のうち、2021年12月時点で全国残存台数1万7072台という報告がある。生産終了から30年近くが経過した車両だが、今も約5割が残っているというのは驚異的な数値だ。それだけビートが多くのユーザーに愛されていることがわかる。
ちなみにビートの中古車は、執筆時点で、中古車検索サイトで調べると148台ヒットした。
価格も一部300万円台というものもあったが、その多くは50~100万円程度で、中古車価格が高騰している国産スポーツカーの中では手が出しやすい個体も多い。2人乗りで5速マニュアルのみ、積載量も最低限、さらにパワステもなしと、メインカーとしては気合いのいるクルマだが、セカンドカーとしてコツコツ直しながら乗る覚悟があるなら面白い。
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