「快進撃」インドネシア高速鉄道、延伸計画の行方 経済急成長で「待ったなし」、資金調達には課題

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ジャワ島は、インドネシアの国土の面積の10%に満たないにもかかわらず、人口の約6割、1億5000万人が集中し、首都ジャカルタはもちろん、地方部にまで満遍なく高い人口密度のエリアが広がっている。日本列島と多くの近似点を持つ島ではあるが、どんな農村部であっても人々でにぎわっており、過疎や寒村という言葉とは無縁の世界だ。

人口の増加は当分続き、平均年齢は30歳ほどで人口ボーナス期真っただ中である。2050年までには日本のGDPを抜き、世界4位の経済大国になるとも予測されている。1960~1970年代の日本の高度経済成長期のようでもあり、高速鉄道が開業したのは当然のこととも言える。

ジャカルタ―バンドン間の鉄道は一時期衰退に見舞われていた。2008年当時、ジャカルタ―バンドン間の在来線特急「アルゴグデ」(現在の「アルゴパラヒャンガン」)の料金はエグゼクティブクラスでわずか4万5000ルピア(約410円)、無料の給食サービスまで付いていた。所要時間は現在と同等で、設備は今よりも豪華であった。同区間を結ぶ「パラヒャンガン」(エグゼクティブ3万5000ルピア=約320円)と合わせ、13往復ほどが設定され、インドネシア版エル特急といった様相を呈していた。

だが、利用者数は2005年にバンドンまでの高速道路が開業してから減少の一途をたどっており、2009年には運行本数が半分以下に削減(アルゴグデとパラヒャンガンが統合)され、一時は車両も5両に減車されるほど、両都市間の鉄道需要は縮小した。

インドネシア鉄道 特急アルゴパラヒャンガン
在来線特急「アルゴパラヒャンガン」の現在の姿。後ろの高架橋は高速鉄道(筆者撮影)

富裕層取り込みに成功した鉄道

しかし、マイカー保有者の増大で、開業時にはジャカルタ―バンドン間1時間半を謳った高速道路も、渋滞で3時間を超えることが常態化してきた。一方、来るべき高速道路時代に備え、国鉄(KAI)はICT技術の導入と、「安全」「快適」「清潔」をモットーにする鉄道改革を推進し、中産階級の鉄道回帰が起こった。さらに、それまで鉄道に乗ったことのなかった富裕層までもが鉄道を利用するようになった。

閑古鳥の鳴いていたアルゴパラヒャンガンは一転、2013年頃から増発、増結が図られ、ダイヤ改正ごとに本数を増やして2019年12月には最大20往復が設定可能なダイヤになった。それでも週末にもなれば、当日のチケットはほぼ取れない状況であった。料金はこの10年間で大幅な値上がりを見せているにもかかわらずだ。2015年頃はエグゼクティブクラスが15万ルピア(約1390円)だったのが、今や25万ルピア(約2320円)である。単なる統計だけでは説明が付かないほどの経済成長がこの10年間に起きている。KAIの値上げ額は、もはや物価上昇率以上であるが、それほどまでに国民が豊かになっている。

アルゴパラヒャンガン 乗車風景
特急「アルゴパラヒャンガン」に乗車する人々(筆者撮影)

高速鉄道は12月から、月~木曜日20万ルピア(約1850円)、金曜・土休日25万ルピア(約2320円)のプロモ価格に移行したが、利用者数は増加の一途だ。今後、30万ルピア(約2780円)の正規運賃になったとしても利用を継続するという乗客の声は、嘘偽りない国民の肌感覚と言える。

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