改正大麻取締法「使用罪」創設で浮かぶ新たな問題 「医療用大麻」解禁で難病治療には新たな光も
危険ドラッグの成分である合成カンナビノイドHHCHが入った大麻グミは、大阪市の会社が製造・販売していた。厚労省は11月22日、HHCHを薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)上の指定薬物とし、所持、使用、流通を禁じた。
さらに、今後もHHCHと構造が似た合成化合物が含まれた新製品が出てくる可能性があるため、厚労省は12月27日、似た成分をまとめて規制する包括指定も行った。
これに対して、「包括指定をしても、いたちごっこが続く可能性はある。規制だけでは薬物問題はなくならない」と話すのは、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部心理社会研究室(東京都小平市)の嶋根卓也室長だ。
合成カンナビノイドは幻覚などの精神作用を引き起こす人工の化学物質。同じく精神作用を持つ大麻の成分「THC」と似ており、摂取すると大麻に似た感覚をもたらすことから、「合法の大麻代用品」と偽装されて売られることが多い。
THCと似た成分を含む危険ドラッグは近年、次々と登場しており、2021年にはHHCを含む製品が、その後もTHCHを含む製品が出回り、健康被害の情報が寄せられた。
この2つは2022年3月と2023年8月にそれぞれ薬物指定されている。今回も新たに法律をすり抜けるかたちで、化学構造を変えたHHCHを含んだ製品が登場したわけだ。
合成カンナビノイドも、THCも、脳内のカンナビノイド受容体に結合するが、嶋根室長によると、受容体に結合する力がTHCよりも高い合成カンナビノイドもあれば、低いものもあるという。結合力が高い場合は、健康被害が出る危険性も高いといえる。
今回の包括指定について、嶋根室長は次のように指摘する。
「一括して規制することは合理的であり、一定の抑止効果が見込まれる。しかし、規制のたびに新たな化学物質は登場する。薬物問題が消えたことはこれまでない。規制だけでは薬物問題はなくならない。薬物問題を抱えた人が相談や支援につながりやすい社会が必要だ」
法改正で医療用大麻が解禁に
他方、2023年12月に成立した改正大麻取締法の主な柱は、医療用大麻の利用の解禁だった。
海外では幻覚や妄想といった精神作用を起こさない大麻の成分「CBD」を主成分にした難治性てんかんの治療薬エピディオレックスが使用されているが、日本ではこれまで大麻草から製造された医薬品の使用を認めていなかった。そのため、今後、安全性と有効性が確認されれば使用できるように変更した。
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