リコー社長・近藤史朗--日米で人員1万人削減へ、改革なくして未来はない
被災工場が完全復旧 生産基盤は国内に残す
──東日本大震災の発生は業績に影響を与えそうですか。
ビジネスへの影響は限定的だろう。当初はリコー光学(岩手県花巻市)など5拠点が生産停止を余儀なくされた。東北リコー(宮城県柴田郡)のトナー工場に至っては、タンクが損傷するなど壊滅に近い状況だった。ただ、その後、社員が不眠不休で作業を続けてくれた。現場では携帯テレビ会議システムを使用して、拠点間で連携してくれた。これらの効果で、5月には完全復旧した。「根性」でやってくれたよ。
部品在庫については当面は問題ない。コンテナ船で輸送中の洋上在庫を含め、半完成品として約1カ月分の部品ユニットを保持しており、ある程度在庫がある。基幹部品を内製化していることもプラスだ。マイコンなどは若干調達難にあるが、大きなマイナス要因にはならないだろう。
--とはいえ、震災は主力工場が東北に偏在するリスクを浮き彫りにしたのではないでしょうか。海外に拠点を移す計画はありますか。
確かに、当社は国内の主力工場が東北に多い(下図)。が、工場の人員は震災直後から「自分たちが作業していた工場なのだから、すぐに自分たちで直せますよ」と言い、実際に早期復旧を図ってくれた。ものづくりの基盤は強いな、とあらためて感じた。やはり、基幹部品の生産は国内に残しておかなければいけない。
復興支援の意味を含めて、震災以降に東北リコーの増強を決めた。今期中に110億円を投資し、トナー工場を拡張する。東北圏内に事務機のリサイクル工場も建設する。具体的な場所については検討中だ。
一方で、中国工場は将来的に不安がある。人件費上昇の問題や政治リスクなどが横たわる。中国は現在、他地域への輸出品も手掛けているが、今後は現地仕向け分のみの生産に絞るかもしれない。生産を海外に移すのではなく、国内回帰を推進するかもしれないということだ。
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こんどう・しろう
1949年生まれ。73年新潟大学工学部卒業。リコー入社後は技術畑を歩き、デジタル技術を複合機に展開した実績を持つ。2003年常務取締役、07年から社長兼CEO(現職)。趣味は家庭菜園など。
(聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、梅咲恵司 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2011年6月25日号)
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