リコー社長・近藤史朗--日米で人員1万人削減へ、改革なくして未来はない
--市場鈍化を想定しているとはいえ、業績は赤字ではありません。「人員1万人削減」を決断した背景には、何があるのでしょうか。
確実に利益を出せる企業体質を構築したかった。実は、海外で企業経営の経験がある先輩から、個人的なアドバイスを受けた。「近藤さんね、人件費は固定費(売上高や販売台数に関係なく一定に発生する費用)ではないよ。変動費(売上高や販売台数に応じて増減する費用)だよ。人件費に対する認識を変えなければ、グローバル競争に勝てないよ」。この言葉はインパクトがあった。
リコーには「三愛精神」(創業者が唱えた「人を愛し、国を愛し、勤めを愛する」という考え方)があって、退職勧奨はいっさいしてこなかった。今回は評価制度を見直す。パフォーマンスの低い人員にはその評価を伝える。「最低ランクの仕事を続けていたら、転職を勧められるよ」と。人事の仕組みそのものを変えないと、会社は持続しない。
大企業病から脱却へ 中計目標は必達
組織設計や業務プロセスなども大改革する。リコーは米IBMと比べると、従業員1人当たりの付加価値などが比較にならないほど低い。今のパフォーマンスでは、グローバル競争を勝ち抜くことができない。
大企業病に冒されていた、と言っても過言ではない。100円の物品を買うのに、伝票処理などで1000円ぐらいの作業コストをかけていた。ほかにも、営業担当者の人事評価に複雑な手続きを経なければならないとか、内部取引のための煩雑な処理とか……。こういった作業は顧客価値を生まない。
効率の悪い部分は変えないといけない。まずは日本で、営業拠点ごとに担っていた間接業務を特定拠点にまとめる計画だ。世界全拠点の業務を集約することも、将来的には考えなければならないだろう。
──しかし、リストラ勧告や効率化追求だけで1万人を削減できますか。
米国ではアイコン社を買収したことで、リコーとバックヤード(間接業務)の人員が重複している。削減の対象は、米国や日本が多くなるかもしれない。
──新中計の数値目標を達成するのは、容易ではないのでは?
絶対に達成する。今までは「成り行き」で業務を進めていた感があったが、今回は(組織設計の抜本的見直しなど)「本丸」に手を入れる。仕事のプロセスを再定義して、目標に到達する決意だ。改善、改善で少しずつパフォーマンスを上げていくのではなく、改革の到達地点を明確にして、諸施策を断行していく。