エーザイ認知症薬「年間298万円」に決まった裏側 異例の「45%加算」でもエーザイは不服なワケ
エーザイは当初、レケンビの薬価算定を類似薬比較方式で行うよう求めていた。同社がより高い価格を望んでいたことは、その際に比較対象として提案していた類似薬からも見て取れる。
エーザイが示した類似薬は、希少疾患の末梢神経障害進行を抑えるファイザーの薬「ビンダケルカプセル20mg」と、多発性硬化症の身体的障害の進行抑制薬「タイサブリ点滴静注300mg」の2つ。前者は年間薬剤費が6000万円を超える高額医薬品となっている。
12月13日に開いた会見で、エーザイの内藤晴夫CEOは「レケンビが臨床効果に加えて介護負担などの軽減効果があることから、『バリューベースドプライシング』(価値に基づいた価格設定)を提案してきた」と振り返った。
エーザイはレケンビの承認・販売に先立ち、海外の論文などを引用する形で同薬の費用対効果に関するメディア向け説明会を開くなど、従来の薬価算定にとらわれない価格設定を各方面に訴えかけてきた。
その先頭に立ってきた内藤CEOは「今回は(介護費の軽減効果などが)算定対象とならなかったが、今後議論されるだろう」と、わずかに悔しさをにじませた。
議論されたこと自体に意味がある
ただ、エーザイのこうした活動によって、薬価算定のあり方に改めて注目が集まり、これまで以上に深い議論を導いた可能性はあるだろう。
通常、中医協による薬価算定の資料は1品目当たり2ページで説明されるが、レケンビは6ページにわたってその算定根拠が示された。認知症という、多くの人にとって罹患可能性のある病気を対象としていることも、議論が慎重に行われた理由とみられる。
横浜市立大の五十嵐教授は「介護費用削減効果についてはこれまで話題にすら上がらなかった。議論されたということだけでも意味がある」と評価する。
一般的な消費財のように、高い価格がつくと薬の売れ行きに影響が出るかといえば、そうとは限らない。患者の自己負担額は、「高額療養費制度」を用いて抑えることができるからだ。
年間の収入によって上限は異なるが、例えば年収370万円以下の場合、自己負担額の上限は年間14万4000円となる。一方、その差額は医療保険などからまかなわれるため、薬価が高いほど国の財政負担増にもつながる。アメリカなどと比べて日本の薬価が低いのには、こうした背景もある。
ただ、低すぎる薬価は、国内での創薬に対する製薬会社のモチベーションを下げてきた。エーザイのレケンビは、今後の薬価をめぐる議論に一石を投じる存在になるかもしれない。
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