エーザイ認知症薬「年間298万円」に決まった裏側 異例の「45%加算」でもエーザイは不服なワケ
日本での薬価は、厚生労働省の薬価算定組織で検討された後、中央社会保険医療協議会(中医協)で了承されて決まる。製薬会社にとっては、長い時間をかけて投じてきた巨額の開発費用を回収するべく、少しでも高い値段をつけたいところだが、国内での販売価格を自由に決めることはできない。
薬価の決め方は大きく2つある。類似する既存薬の値段と比較する方法と、原価を積み立てていく方法だ。レケンビには類似薬がなかったため、後者の原価計算方式が採用された。
算定時には、開発にかかった費用に加えて、その薬への評価である「加点」が行われる。従来なかった治療法であったり、既存薬より大きな効果をもたらすものだったりする場合、こうした要件をすべて満たしていれば「画期性加算」、一部を満たしていれば「有用性加算」が行われる。
レケンビ1瓶(500mg)当たりの製品総原価は5万5592円。そこへ流通経費や会社側の利益、消費税を加えた価格は7万8926円となる。今回、さらにその価格に45%の有用性加算が行われ、1瓶11万4443円という薬価に決まった。
「多くのケースでは有用性加算は5〜10%で、45%はかなり例外的だ」。前出の五十嵐教授はそう指摘する。
エーザイ側は「不服」を表明
レケンビの薬価は、12月13日に開かれた中医協で了承された。その際の資料からは、「既存の治療方法で効果が不十分な患者群においても効果が認められたこと」「初めて認知症の進行抑制が認められた薬剤であること」などが考慮された結果、大幅な加算となったことが読み取れる。
しかし、当のエーザイにとっては十分に満足できる価格ではなかったようだ。11月下旬に行われた1回目の算定の後、“不服意見”を表明していたのだ。
エーザイ側は、レケンビの特性を踏まえると、有用性加算よりも加算率が高い画期性加算に当てはまるとの主張だ。レケンビの臨床試験結果を基に、「標準治療と比較した費用対効果が高く、医療費や公的介護費などを減少させることが示唆された」とも訴えている。
結果的にこの訴えは、レケンビが重度の認知症患者を対象としていないことなどから退けられた。医療費や介護費についての主張に対しては、厚労省側は「これまで薬価収載において評価の対象としておらず(中略)、薬価に反映させることは困難」とした。
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