民間企業での原発は限界、国家主導で統合的運営を--日本総合研究所理事長・寺島実郎

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--当面、化石燃料による発電でつなげるという考えについては?

原発以外に、日本のエネルギー政策あるいはエネルギー安全保障のうえで目が離せないのが、中東情勢だ。日本は石油の9割、LNGの25%など一次エネルギーの約4割を中東に依存しているが、その中東情勢がいわば液状化していることは極めて重大な問題だ。昨年の米軍イラク撤退以降、中東では米国の影響が薄れ、また米国に代わって覇権を握る国も現れず、「覇権なき中東」の状態となっている。それに加えて、親米といわれる国から始まった民主化運動の動きも見逃せない。

菅直人首相は先頃のG8で、2020年までのできるだけ早い時期に電源供給の2割を再生可能エネルギーで賄う方針を表明したが、この数字の持つ意味は何か。

そもそも昨年6月に発表したエネルギー基本計画においてさえ、30年には再生可能エネルギーの比率を2割に引き上げるとしていた。それを10年近く前倒しするのだと理解すれば、再生可能エネルギーへの旗振りをしているとも取れるが、この数字はあまりにも中途半端だ。つまり昨年のエネルギー基本計画は一方で、30年までに原発の比率を50%に引き上げるとしていた。それが今回の事故で後退し、逆立ちしても25%が限度、現実的には20%ぐらいだろう。その差の30%を何で埋めるのか。

それは化石燃料か再生可能エネルギーしかないわけだから、その半分を埋めるにしても、再生可能エネルギーは35%になっていないとつじつまが合わない。残り15%を化石燃料で賄うとしても、中東情勢も考えれば、今よりもさらに化石燃料比率を高めてやっていけるのかどうか。

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