東芝が新体制で問われる「出資企業との距離感」 取締役は社長以外を総入れ替え、株主はJIPのみ
東芝にはエネルギーシステムズ、インフラシステムズ、デバイス&ストレージ、デジタルソリューションズという4つの分社がある。22日付で分社体制を事実上廃止し、今後は島田氏が4社の社長を兼務する。
狙うのはインフラビジネスのデジタル化や事業間の横連携だ。それを進めていくためには、電機や通信など異なる分野の技術者が垣根を越えて連携していく必要があると指摘した。
根底にあるのは、組織形態が時代遅れになっているという危機感。島田社長は「現在の世の中とわれわれ(東芝)の事業部の形があっていない」と喝破した。
単に製品を供給するだけのビジネスモデルから、顧客の課題解決を中心としたビジネスに移行するためには、組織のフラット化が必要だ。実際、事業再編で先行した日立製作所では、複数のビジネスユニットを統括するセクターを設けたほか、「ルマーダ」という標語を掲げて部門間の連携を促した。
東芝ににじり寄る出資者
今回、約2兆円の巨額資金を投じてまで上場廃止を推し進めたのは、海外投資家を中心としたアクティビスト株主の排除が最大の目的だった。東芝経営陣は、立場によってさまざまな意見を持つ株主の意見をうまく集約できず、経営判断が遅れた。
JIPが単独の株主になったことで、最も期待されているのは経営のスピードアップだ。ただ、非上場化の過程で資金の出し手と東芝は急速に接近している。
12月8日には半導体製造大手のロームと東芝がパワー半導体の共同生産を始めると発表した。ロームは東芝の非上場化に3000億円を出資しており、半導体分野で東芝との協業に意欲的だった。
ロームのほかにオリックスや中部電力など国内連合20社超がJIPを通じて出資している。東芝は経営の自由度を確保しつつ、自社の再成長につながる投資を行えるのだろうか。
島田社長にその点を尋ねると、「仕組み上、(ファンドの)裏側で出資をしている方が経営に直接関与するということはない」との答えだった。
一方で、「出資者にはいろいろな、東芝に頑張ってほしいということ以外に事業投資などさまざまな意味合いがあるだろう。1つひとつ(の案件)については是々非々だ」とも述べ、今後の協業にも含みを持たせた。
東芝は現在でも約10万人の従業員を抱え、多数の特許や先進技術を要する企業でもある。各出資者との距離を適度に保ちつつ、協業などでシナジーを生んでいけるのか。東芝だけではなく、親会社としてのJIPの実力も問われている。
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