「発達障害の子ども」に世界はどう見えているのか 「家・学校・社会」の3シーンから当事者の知覚世界をひもとく

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具体的には、「スーパーなどで一緒に買い物をしていたら、いつの間にか視界から消えていた」「サイレンカー(消防車や救急車、パトカーなどの緊急車両)を追いかけて走り出してしまった」といった具合です。そのため、たびたび迷子になります。

「ちょっと面白いものがあるとバーッと走っていって、自分がどこにいるのかわからなくなり、結局迷子になってしまうんです。だから、この子が小さい頃は常にしっかりと手を握っていました」というお母さんの思い出話をひんぱんに聞きます。

また、乳幼児の時期から昼寝をせずに1日を過ごし、親御さんが寝つく時間になってもまだ元気に動いているお子さんも見られます。

なお、ADHDの場合、睡眠過少のケース以外に、対照的に睡眠過多のケースもあります。特に中学生頃から、いくら夜間に眠っても昼間の眠気があるという過眠症も見られます。

感情を爆発させてしまう子も

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さらには、感情を爆発させてしまうお子さんもいます。怒りっぽかったり、イライラして物にあたってしまったり。コンビニで買ってほしいお菓子があったのに親御さんに「ダメ」と言われてしまったことが許せず、絶対に買ってほしくて、道路に突っ伏したまま駄々をこねて、疲れ果てるまで何十分も泣きわめくといったケースもありました。

こういった多動・衝動性に関する症状は、歳を重ねるにつれて激しさを増すものもあれば落ち着いていくものもあり、人によってさまざまです。

とはいえ、うろうろ歩きやかんしゃくは日々ひんぱんに起こることなので、親御さんを初めとするご家族は、心身ともに苦労が多いと思います。

ただ、私の実感としては、「兄弟姉妹との間でケンカになってしまい、ADHDのお子さんが衝動的に暴力を振るってしまった」といった出来事は必ずしも多くはありません。

つまり、ケンカや揉め事の頻度は、定型発達の兄弟姉妹とあまり変わらないようです。ADHDのお子さんの特性を、兄弟姉妹がある程度は理解していることが理由の一つかもしれません。

岩波 明 精神科医
いわなみ あきら / Akira Iwanami

1959年、横浜市生まれ。東京大学医学部医学科卒。医学博士、精神保健指定医。東大病院精神科、東京都立松沢病院などで診療にあたる。東京大学医学部精神医学講座助教授、埼玉医科大学精神医学講座准教授などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授。精神疾患の認知機能、司法精神医療、発達障害の臨床研究などを主な研究テーマとしている。著書に『狂気という隣人』『うつ病』『文豪はみんな、うつ』『生の暴発、死の誘発』『精神科医が狂気をつくる』『心の病が職場を潰す』ほか多数。

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