新路線「仙石東北ライン」は被災地を救うか 宮城の"新たな大動脈"に集まる期待と課題

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石ノ森章太郎氏のイラストをちりばめた「マンガッタンライナー」

JR東日本は、東北のほかの被災地域で「SL銀河」「東北エモーション」などの観光列車が導入しており、人気を博している。

仙石東北ラインにも同様の列車を導入する考えはあるのか。この質問に対して、冨田社長は「地域の皆様と知恵を出し合って考えていきたい」と答えるにとどめた。

仙石線では石巻市と共同で、車両に「サイボーグ009」や「仮面ライダー」など、漫画家・石ノ森章太郎氏のイラストをちりばめた「マンガッタンライナー」を走らせており、市内の観光名所「石ノ森萬画館」のPRに一役買っている。仙石東北ラインにも誰もが乗りたくなるような観光列車が加われば、観光振興に大いに寄与するはずだ。

鉄道は人口流出を止められるか

もう一つ足りないものがある。それは街だ。高台に造られた野蒜駅や東名駅の周辺は造成工事の真っ最中で、住居はまだ建っていない。つまり、現在の両駅は生活利便性の向上につながっていない。

被災地では今も人口の流出が続いている。人口4万人の東松島市では、1000人が震災で亡くなり、同じく1000人が震災後に転出したという。しかし駅ができれば、住んでいた人が戻ってくる。

来年3月には、仙石線の陸前赤井―蛇田間に「石巻あゆみ野」という新駅が設置される。被災自治体での新駅設置は初めてであり、2018年3月までに一戸建て住宅用地と災害公営住宅、合わせて2000世帯分が供給される計画だ。

東松島市の阿部秀保市長は「被災した人が新たに住む家は、どれも駅の近くだ」と言う。「野蒜駅や東名駅が、新たに生まれる街の中心になってほしい」と冨田社長も期待を込める。観光列車が走れば、観光客もやってくる。被災地復興のために鉄道が果たすべき役割は限りなく大きい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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