寄付額1兆円突破「ふるさと納税」大衆化の危うさ 上位10%の自治体が"寡占状態"で広がる格差

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人口減少が続く地方の自治体であっても、住民税の流出過多となっているところもある。ふるさと納税受け入れ額から返礼品や配送料などの経費を差し引き、自身の自治体から流出した住民税控除額を加味すると、2022年度は488自治体がマイナスになった。そこには奈良県田原本町や、愛媛県松前町など大都市圏でない自治体も含まれる。

この制度には「正直者がばかを見る」インセンティブが働く。人気の返礼品をそろえて金額を集める自治体に、ふるさと納税の大半は持っていかれてしまう。ふるさと納税を利用しない人も、利用する人がほかの自治体に住民税を流出させることで、自らの町の財源が減少する。

本来、居住地の行政サービスに使われるべきお金が、ポータルサイトのテレビCMやポイント還元、物流費、返礼品を生産する事業者などに、膨大なコストと手間をかけて分配されているのが現在の姿だ。

自治体が自由に使える貴重な財源

問題を抱えたまま大衆化したふるさと納税は、さらなる制度の改良が欠かせない。現場の自治体職員やポータルサイト関係者からもさまざまなアイデアが浮上している。

現在は「とりあえず寄付を集めればいい」という姿勢で、使い道を指定しない「市長におまかせ」といった選択肢を設ける自治体も少なくない。目標金額付きのプロジェクトを先に決め、クラウドファンディングのような形で、その後に返礼品を受け取れるやり方もあるだろう。生まれ育った自治体や、住んだことのある自治体への寄付に対し、インセンティブを設けることも考えられる。

住民税の流出が深刻になっている東京都の特別区長会が主張するように、所得に応じて控除割合を下げることや、現在寄付額の3割までとなっている返礼品の割合を下げて、自治体に残るお金を増やすことなども、過熱する制度を落ち着かせるためには必要かもしれない。

多くの自治体では、住民税や法人税など既存の財源だけで自治体の基本的な運営にかかるコストを賄えず、財政需要に足りない分は国から地方交付税の交付を受けている。税収を増やしたところで地方交付税が減ることになるので、税収を増やすインセンティブに乏しい。

それに対してふるさと納税は、手取り収入分をそのまま自治体が独自の政策に使うことができる。利用する側にとっても、税金の使い道を選べる世界でも珍しい施策だ。問題は多いが、15年かけて普及してきた制度である。活用方法を改めて議論する必要がありそうだ。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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