寄付額1兆円突破「ふるさと納税」大衆化の危うさ 上位10%の自治体が"寡占状態"で広がる格差
勝谷氏は「使い道で勝負するのは正論だが、(返礼品で勝負する自治体に)勝ち筋を見出すのは難しい」とも明かす。同町が2022年度に集めたふるさと納税の金額は2億0815万円。5年間で約10倍へ増加したが、全国1738自治体の中では796番目にとどまる。
宇治田原町には海や牧場がなく、返礼品として人気化しやすい海産物や肉を扱っていないこともあり、ポータルサイトのランキングなどでは埋もれてしまう。
住民税の獲得をめぐる「自治体間の自由競争」のように見えるが、自治体によって特産品や産業立地は大きく異なり、そもそもスタート地点が公平ではないという声は多い。「特産品づくりや産業誘致も含めて、自治体の創意工夫次第」とする意見もあるが、納税者のお得志向が強まる中、返礼品ばかりが寄付の決定要因になっていることは長らく問題視されてきた。
にもかかわらず自治体職員の多くは「金額をたくさん集めた自治体がえらい風潮」(ポータルサイト担当者)という考えに苛まれている。どんなに理念を掲げて寄付を募っても、ユーザーはお得な返礼品にばかり目が向いてしまう。
上位の自治体は固定化
激化する返礼品の人気投票によって、「持てる自治体」と「持たざる自治体」の格差は開く一方だ。
2022年度、ふるさと納税受け入れ額上位1%の18自治体が全体に占める金額シェアは18.9%、上位10%のシェアは57.9%にも上った。直近3年間で、上位自治体による寡占度合いも強まっている。しかも、最上位の自治体の顔ぶれは固定化されつつあり、自治体間の格差は累積している。
都市部から地方への税収の移転が目的の1つだが、実際は一部の勝ち組自治体ばかりが潤う構図となっている。最近では、住民税の流出に耐えかねた都市部の自治体も返礼品を強化し始めており、京都市や名古屋市といった大都市も上位1%に名を連ねる。
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