寄付額1兆円突破「ふるさと納税」大衆化の危うさ 上位10%の自治体が"寡占状態"で広がる格差

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ふるさと納税の人気は肉や海産物、果物などに偏る傾向がある(記者撮影)

「ふるさと納税をやめよう」

そんなテレビCMが12月26日に放映された。広告主は、ふるさと納税ポータルサイトの大手「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク。CMでは「ふるさと納税をやめよう。なんて言いたくない」「ふるさとを応援する意義を伝えたい。ふるさと納税を考えよう」などと発信した。

最古参で最大手だったふるさとチョイスだが、サイト間の熾烈な競争に直面し、シェアを落としている。寄付の申し込みが集中する年末の時期を狙い、あえて意見広告を出すこととした。

「そもそも税金を使ったビジネス。節度を守って運営したい」と静観してきたが、最近は決済事業者と提携したポイント還元もしており、今年はテレビCMも解禁することになった。

マス層まで広がったふるさと納税

制度創設から15年が経ったふるさと納税は右肩上がりに拡大を続け、2023年度は寄付総額が初めて1兆円を突破することが確実視されている。これまで何度か制度の微修正はあったものの、根本の問題が残ったまま普及してきた。

ふるさと納税は当初、もっぱら高所得者が利用する制度だった。所得水準にかかわらず、一律住民税の20%(2015年度までは10%)まで税額控除される仕組みのため、高所得者ほど受けられる恩恵が大きくなるからだ。

しかし最近は、制度の存在を知らない人がほぼいないほど浸透した。2013年度は1件あたりの平均金額は3万4000円ほどだったが、直近の2022年度は1万8000円ほどまで下がっている。小口の利用が増えたのは、ふるさと納税の裾野がマス層まで広がったためだ。

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