ふるさと納税が将来の「庶民増税」を招くおそれがある。そのカラクリを解き明かす。
「軽井沢事件」──。ふるさと納税をめぐって、総務省職員の間でそう呼ばれている騒動がある。
2011年、株の売買で30億円程度の譲渡所得を得た長野県軽井沢町のある町民が、東日本大震災の被災自治体などに約6億9000万円のふるさと納税をしたことから始まった騒動だ。
ふるさと納税には住民税の減税措置(税額控除)がある。そのため軽井沢町にはその町民からの住民税はいっさい入らなかった。一方、長野県は株式譲渡所得への課税分として、その町民から約1億円の県民税を源泉徴収していた。結果、住民税約8000万円を還付しなければならなくなったのだ。
住民税の仕組み上、還付金の4割は長野県が負担するが、残り6割(約4700万円)は同町民の居住する軽井沢町が負担しなければならない。
軽井沢町は当時、泣く泣く貯金(財政調整基金)を取り崩して還付金を支払い、後に総務省が特別交付税の形でその一部を補填することになった。
要するに、個人投資家の節税策にふるさと納税が巧みに利用され、その税務処理をめぐって総務省や自治体が振り回される格好となってしまったわけだ。
「金持ち優遇」の代償
そもそもふるさと納税は、年収(所得)が大きいほど、所得税と住民税の減税枠(控除額)が青天井で増える仕組みだ。控除に定額の上限はないため、所得の多い富裕層ほど節税に利用できる余地が大きくなる。
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