子どもを生成AIを使いこなせるよう育てるには? 「AIに取って代わられる人」にならないために

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ふたつめは、生徒に「考える技法」を授けることです。いきなり授業で「さあ、この問題について考えてみよう」と投げかけても、まだ「物事を深く考える」ということを知らない生徒たちはどうしていいかわかりません。これでは、課題を投げたまま放置することになり、生徒は何の能力も身につかない。ただ「ある課題について考える時間を設けた」という教師都合のアリバイが作られるだけ、ということになりかねません。

「考える技法」を生徒に授けるために

物事を考える際に視点を定め、課題に切り込み、考えを深めるのは、まず基本的な手法を教わらないとできないものなのです。「考える」という行為は、物事を比較したり、分類したり、多面的に眺めたり、多角的に捉えたりといったことの繰り返しです。これは多分に技法的なものであり、勘と経験のような曖昧な感覚ではなく、ツールを使って鍛えることができます。

「考える技法」を生徒に授けるためには、多種多様なシンキングツールを使った「思考のトレーニング」を授業内で行う必要があるということです(シンキングツールの種類や学年ごとの思考スキルなどについては、千葉県印西市立原山小学校の公式サイト内「思考スキルと思考ツール」に詳しいため、気になる方はご覧になるといいでしょう)。

そしてシンキングツールを使って考える技法を授ける際には、教師が適切な「問い」を発することが非常に重要です。これが3つめの条件です。

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教師からの「問い」によって課題の解像度を上げる。ただ与えられたままの形ではぼんやりとしか捉えられない課題に補助線を引いてあげて、「何について、どのような切り口を設け、考えればいいのか」、いくつかの選択肢を与えるイメージです。

思考とは「絞られた問い」があって初めて動き出すものです。それは大人でも変わりませんが、まだ考えることに慣れていない子どもには補助が必要です。「絞られた問い」を教師から示す必要がある。その意味でも、「正解のない問い」について考える高次思考の素養が、やはり教師には欠かせないといえます。

そして、この「絞られた問い」こそが生成AIにおける「プロンプト」です。「プロンプト」をもって初めて生成AIは優れたパートナーになるのです。

ここではまず、近ごろ教育界を悩ませている「生成AIの是非」について、次のことを頭に入れておいてください。

・「生成AIは使い方次第で生徒の思考力や想像力、創造性を高めるのに役立つ」けれども、安易に生成AIを授業に取り入れても意味はない。

・生成AIを真に役立てるには、「教師自身が高次思考をできること」「生徒に考える技法を授けること」「適切な問いを投げかけること」という3つの条件がある。

石川 一郎 カリキュラムアドバイザー/21世紀型教育機構理事

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いしかわ いちろう / Ichiro Ishikawa

1962年東京生まれ。早稲田大学教育学部社会学科地理歴史専修卒業。暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教鞭を執る。前かえつ有明中・高等学校校長。著書に、『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)、『2020年からの教師問題』(KKベストセラーズ/ベスト新書)などがある。

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