インドネシアに登場「豪華個室夜行列車」の集客力 フルフラット座席の「寝台車」、乗車率は9割超

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KAIはこの10年間で、清潔、安全、そして高付加価値化を柱とする鉄道改革を急ピッチに進めており、オンラインチケット化による駅の混雑解消、長距離列車の全席指定化、新型車両の大量投入を実施し、従来の鉄道に対するマイナスイメージを払拭してきた。

2018年6月には、その集大成として航空機のファーストクラスを彷彿させる定員18人の「ラグジュリー」を投入した(2018年7月15日付記事「『まるで旅客機』インドネシアの新型夜行列車」で詳報)。当初はジャカルタ―スラバヤ間を北本線経由で結ぶ特急「アルゴブロモアングレック」のみに連結されていたが、その後、主要都市を結ぶほかの列車にも連結が拡大された。

ラグジュリー客車
12月から2023年製の新型車両に置き換わった特急「アルゴディウィパンガ」。ラグジュリーは1編成中3両に増結されたが、それでもチケットは取りづらい状況が続いている(筆者撮影)
インドネシア特急運転系統図

寝台車が今までなかった理由

当時の内部関係者は、ラグジュリーの次は寝台だと意気込んでおり、国営車両製造会社(INKA)での設計も始まっているとまことしやかに噂されていた。しかし、その後コロナ禍で計画は中断。右肩上がりだったKAIの業績も2020年、2021年には赤字に転落した。だが、2022年の営業利益は2019年比で100%を上回るまで回復した。輸送人員は7割ほどの回復にとどまるが、貨物輸送量が2割ほど増えたことに加え、旅客列車の全クラスで150%前後の値上げを実施したことや、高価格帯クラスの利用者増加が貢献した。

KAIの乗車人員と業績

そして、2023年はKAIにとってコロナ禍後の再始動の年となった。3月にはINKAに一般客車(エグゼクティブおよびエコノミー)612両、ラグジュリー客車11両を発注している。ただ、今回のコンパートメントスイートは新造車ではなく2008年製のエグゼクティブ客車の改造で、必要最低限の3両が落成した。

ラグジュリー(1列×2列仕様のラグジュリーIIの登場により、現在はラグジュリースリーパーに改称)ですら値上げで最安値でも114万5000ルピア(約1万560円)となっている中、その倍額となるコンパートメントスイートの需要はなかなか読めず、改造で対応したものと推測される。現状、3運用に対して3両のみのため、検査時には連結されないことになるが、好調な利用を受けてか、4両目の改造も完了した。

コンパートメントスイート 試運転
コンパートメントスイートのお披露目試運転。レトロ客車、パノラミック客車も併結した豪華編成で運行し、インフルエンサーたちが招待された(筆者撮影)
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