インドネシアに登場「豪華個室夜行列車」の集客力 フルフラット座席の「寝台車」、乗車率は9割超

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今回登場したコンパートメントスイートは完全な1人用個室であり、寝台車(車両番号も寝台車であるTを名乗っている)とはいうもののあくまで座席ベースである。個人的には完全にフラットなベッドとして寝返りくらい打てるようにしてほしいと思うが、過去のトラウマを引きずっているのだろうか。また、大家族主義のインドネシアでは、大人数でわいわいがやがやと旅行するのが当たり前だ。複数人でコンパートメントスイートに乗車しようとすれば出費がかさむうえ、おしゃべりに興じることもできない。

そんな中で「完全おひとり様向け」のプロモーションに出たのはかなりチャレンジングなことだと感じると同時に、インドネシアの経済、文化がいかに成長したかを感じさせる。

コンパートメントスイート
1人用個室になっているコンパートメントスイート(筆者撮影)

改札は「顔認証」で

寝台モードの乗り心地を試すべく、筆者はスラバヤ発のビマ59列車に乗車することにした。スラバヤからジャカルタ方面への列車が頻発しているのは北本線の始発駅、スラバヤパサールトゥリ駅だが、ビマの発着は南本線のスラバヤグブン駅だ。駅の規模の割に、構内で時間を潰せるカフェなどがあまり多くないのが不便であるが、コンパートメントスイートのチケットを保有している乗客は、VIP用待合室を利用できる(ラウンジのある駅ではラウンジも利用できる)。

KAIの多くの主要駅では顔認証改札が導入されており、利用登録を済ませていれば「手ぶら」で改札を通過できる。KAIは2022年9月のバンドン駅での試験運用開始を経て、2023年から導入を積極的に進めている。

顔認証改札
インドネシアで導入が進んでいる顔認証改札(筆者撮影)

インドネシアでは全国民にKTPと呼ばれる、日本でいうマイナンバーカードの所持が義務付けられており、あらゆるサービスを利用する際に必要となっている。鉄道もその1つで、以前から中・長列車のチケット購入時には氏名、KTP番号の入力が必須である。今ではチケットのオンライン購入率が90%を超え、とくに公式アプリからの購入時には、駅でのチェックイン(チケット本券の発券)も不要になったが、改札口でアプリのQRコードとKTPを駅係員に提示する必要があり、改札口前の混雑の原因になっていた。

従来の駅改札
従来は乗車前に、ネットで購入時の予約番号を入力し、駅で発券する必要があった(筆者撮影)

駐在員など長期滞在する外国人を含め、インドネシア居住者の顔写真と指紋は法務人権省に登録されている。KAIでは、この情報とチケット購入時のKTP番号をひもづけし、顔認証改札を実現している。また、ブラックリストに登録されている客の乗車拒否が可能としている。

利用登録は簡単で、とくにインドネシア人同様にKTPを所持していると、専用端末でKTPの情報を読み取り、そこに指紋認証するだけでアクティベーションされる。登録はものの5秒で終わり、その瞬間から改札機を手ぶらで通過できるようになっている。

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