JR神田「アース製薬」副駅名どうやって実現した? 担当者が明かす舞台裏「きっかけは社内の雑談」

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「神田駅のネーミングライツを取得したい。神田駅の東西南北口も商品名にしたい」

副駅名をつけるのは1カ月ほどでOKをもらえた。しかし問題は東西南北口を商品の名前にすることだった。

出口の看板は神田駅から伸びる中央通りや靖国通りなど、道路の目印としても使われている。さらに周囲の会社や商店は「神田駅北口徒歩2分」など、出口を案内の目安に使っている場合も多い。乗降客の混乱を招く恐れもあるのだ。

JR東日本の回答はなかなかなかった。が、ようやく3月頃に決着がついた。神田駅構内から出る乗客が最後に目にするのは、今までと同じ出口名と通りが表示されている黄色い看板だ。ただし、ほかの構内の看板にはアース製薬の商品名がついた出口の名前が表示される。ここで古くからの駅名とアース製薬の商品名が並列することになった。昔からの「北口」と新しい「モンダミン口」が一緒に表示されたのである。

副駅名は「アース製薬本社前」

決まってからは副駅名のネーミング、東西南北口の商品決定、どちらもスムーズに進んだ。あたかも最初から決まっていたかのように、すとんと決まった。

副駅名は「アース製薬本社前」。神田駅の目と鼻の先にあるとはいえ、決して駅前ではない。「東京メトロには”三越前”がある。でも、本当に”前”だからなあ」、「でもここは江戸から栄えている街、神田ですよ。江戸前なら”前”は”付近”という意味だから、神田駅は”アース製薬本社前”で合っている」。副駅名はそんな会話の中で決まった。そして東西南北口は、アース製薬に一番近い北口はメロディにもなっているモンダミン、そして商店が多い西口には癒しを感じさせるバスロマンなど、自然と決まっていったそうだ。

しかし、うれしい楽しい面白いばかりですむ企画ではなかった。駅に関わるということは、街全体に関わるということだ。広告代理店も含め、誰も経験をしたことがない仕事を進める中で、用意しておかなくてはいけなかった準備や対応ができていなかったことを痛感する。「JR東日本からご紹介いただいた神田の各町内会の会長さんたちに助けていただいたり、駅と区では行政区分が違っているので申請が煩雑だったり、感謝と勉強の連続でした」と貴島氏は言う。

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