JR神田「アース製薬」副駅名どうやって実現した? 担当者が明かす舞台裏「きっかけは社内の雑談」

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まずは貴島氏の名刺に書かれた「社長特命全社横断戦略担当」という肩書きについて尋ねた。

「とにかく社内のいろいろなことを、やっています」。社内にはさまざまな部署があり、それぞれが重要な面白い仕事をしている。もし俯瞰して社内の仕事を把握することができたら、連携してもっと新しいことができるだろう。そう思いついた社長から任命された「社長特命全社横断戦略担当」という肩書き、これが名刺に付いていると、どんな会議にも顔を出せて、自由に各部署を横断することができるというのである。話を聞くうちに、そんな風通し良い会社だからこそ、神田駅とアース製薬のコラボが生まれたことがわかってきた。

2022年9月。貴島氏は社員と立ち話をしていた。ふと、思いつきで「神田駅のメロディがお口くちゅくちゅモンダミンになったら面白いのにな」と言ってみた。どこの会社の社内でもよくある、会話の中のちょっとした夢物語である。ほんのジョークのようなものだ。

ところが、それに食いついてきたのが社員たちだった。「面白いですよね!」、「うん……面白いよな!」。

JR東日本は当初「実現は難しい」

大いに盛り上がった。しかし盛り上がるだけで終わらないのがアース製薬であり、そして貴島氏である。すぐにスマホを取り出し、広告代理店に電話をし、そして電話口で歌った。「神田駅のメロディ、これにできないかな?〜お口くちゅくちゅモンダミン♪」

貴島氏の歌声に心が動いたのだろうか。さっそく動いてくれた広告代理店の打診に対するJR東日本の答えは当初、「実現は難しい」だった。

それまでJR東日本と交通広告で強い関係を築いてきたわけでもない。どこかの駅とメーカーで前例があるわけでもない。とはいえ、新奇なアイディアをJR東日本に投げかけただけでも、何か得たものがあるはずだ。

そう思っているうちに冬になった。年が明けた2023年1月、突然代理店から電話が入った。「JR東日本さんが神田駅の発着メロディについて前向きに検討したいそうです!」。

「やった!」。夢物語も口に出せばかなうのだ。

しかし新しい夢がかなえば、もっと大きな夢を見たくなる。JR東日本との本格的な会議、その2回目でさらに大きな提案をすることになる。

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