《日本激震!私の提言》「風評被害」の元凶は誰か、政府の情報開示法は誤り--深尾光洋・慶応義塾大学教授


 食品について政府は、地域別・品目別の詳細な汚染情報を開示せず、政府が定めた安全基準より放射線量が多いものを出荷停止としただけで、それ以上の情報を出さない。また、放射能汚染のレベルが高まった3月17日に水道水の摂取制限や飲料・食品の出荷停止基準を大幅に緩めたことも不信感を増大させた。

こうした状況では、できるだけ体内被曝したくないと考える消費者が原発に近い地域の農作物をすべて敬遠するのは当然で、まったく汚染されていないものまで価格が大幅に下がってしまう結果を招いている。

--政府が本来取るべき行動は。

汚染による被害を最小限に抑え、農地の生産をある程度維持するための提言をしたい。以下は、現代経済研究グループ有志(※)による提言だ。

すなわち、徹底した情報開示で市場機能を回復させることだ。放射能に汚染された地域の農地や港から出荷される生鮮食品については、ロットごとに汚染の水準を表示して販売する。表示を偽った業者には厳しい罰則を課すが、安全基準内であれば、汚染水準の開示を条件に出荷を認める。消費者は自分のリスクと汚染水準を見て購入すればよい。

開示制度が信頼を得られれば、汚染度合いが非常に低い産物には、通常の価格がつくはずだ。汚染があっても基準を下回るものには、それ相応の安い値段がつく。これは風評による安値ではなく、市場が評価した正当な値段ということになる。

安全基準を上回って汚染されている食品は出荷を停止し、その損失は東京電力が直ちに買い取りに応じることで補償すべきである。また、汚染によって価格が下落したものも、汚染されずに正当な価格がついている商品との差額を補償すればよい。

このようなやり方で、汚染された食品が出回るのを防ぎ、汚染されていない食品が売れずに生産者が不当な損害を被ることも阻止できる。

(※)ほかに賛同するメンバーは次のとおり。伊藤隆敏(東京大学教授)、浦田秀次郎(早稲田大学教授)、土居丈朗(慶応義塾大学教授)、八田達夫(大阪大学名誉教授)、八代尚宏(国際基督教大学教授)。

ふかお・みつひろ
1951年生まれ。74年京都大学工学部卒業、米ミシガン大学で博士号(経済学)取得。日本銀行で金融研究局(現・金融研究所)、外国局、調査統計局、OECD経済統計総局などを経て97年から現職。2010年5月まで日本経済研究センター理事長、現在、日本経済研究センター理事兼研究顧問(兼任)。

(週刊東洋経済2011年4月30日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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