《日本激震!私の提言》「風評被害」の元凶は誰か、政府の情報開示法は誤り--深尾光洋・慶応義塾大学教授


 3月14~16日の大量の放射性物質放出後の数週間は、冷却が困難になった三つの原子炉、四つの核燃料プールを同時に海水で冷やすという、七つのお手玉を回すような難しい状況に陥った。仮に一つでも冷却に失敗していたら、チェルノブイリ事故のように、風下に大量の死の灰が降る可能性があった。本来、もっと広範囲の住民に対して避難勧告をすべき事態だった。特に風下の住民に対し、警告を発するべきであった。

政府の情報開示の姿勢と日本のマスコミの報道には、不信感を持っている。首相官邸のホームページには、国際機関によるチェルノブイリ原発事故の報告の一部が載せられているが、肝心の「長期的には9000~1万人が、がんと白血病により死亡する」との見通しを載せていない。これは驚くばかりだ。

危険を過小に見せようという政府の姿勢に、国の原子力政策にかかわった多くの専門家たちも加担し、テレビの報道番組で「安心です」と言い続けた結果、国民の信頼を失ったのではないか。

気象庁や日本気象学会は、風に乗って広がる汚染を予測して避難を呼びかけるべきであった。しかし気象学会は学会員に対して、汚染情報を発表しないようにとの通達まで出した。学会の自殺行為だ。

日本政府の情報開示に不信感を持った外国政府が厳しい態度を取り、外国からの観光客、留学生が逃げ出したのも無理はない。

徹底した情報開示で農産物の市場回復を

--農産物をめぐる情報開示にも混乱があった。

政府やマスコミは消費者の買い控えを「風評被害」と呼ぶが、あたかも消費者の行動が合理的でないかのような、まったく的外れな表現だ。政府の情報開示が不十分だから、不信感を持たれるのだ。

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