製紙再編は瓦解、大王と北越紀州の壮絶バトル 三菱争奪戦に続き、株主総会で激突も

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社長どうしの約束をドタキャン?

2012年6月、北越紀州製紙が大株主になったことについて会見する大王製紙の佐光正義社長(撮影:吉野純治)

実は岸本社長は三菱製紙との販社統合破談に大王製紙が関与したとの一部報道がなされた4月上旬に、以前からの予定に沿って大王の三島工場(愛媛県四国中央市)を訪問。岸本社長は3月中に約束していた佐光社長への面会を求めたものの、応じられなかったという一幕があった。

大王側では、「販社統合破談は当社が原因との記事が出る中で岸本社長が訪問されるのは、世間に対し誤解を招き、お互いいいことではないと判断し、前日に訪問を延期するよう申し出た」と説明する。

しかし、北越紀州側では、6月1日から上場企業への適用が始まったコーポレートガバナンス・コードが株主との建設的な対話を求めていることを背景に、「筆頭株主である北越紀州との対話を拒み続けている」ことについても、佐光社長再任に反対する理由に挙げる方針と見られる。

一方で、同じ6月26日に株主総会を開く北越紀州側も、今回の大王や三菱との一件とは無関係ながら不安材料を抱える。連結子会社である北越トレイディングの元総務部長が、過去15年間にわたって不正に小切手を振り出して換金し、総額24億円もの巨額の着服を行っていたことが5月中旬に発覚したためだ。

北越紀州の株主には、川崎紙運輸と並んで大王自身も保有比率2%の大株主として名を連ねる。大王側ではこの着服事件について、現時点では北越紀州の株主総会などでの具体的なアクションは考えていないとしながらも、「北越紀州の調査委員会の報告書を見るかぎり、先方の内部統制の機能に問題があったのではないか。親会社(北越紀州本体)の取締役や監査役などの責任についても言及していない」と疑問を投げかける。

さまざまな火だねがくすぶる中、はたして2年前のように、お互いの株主総会における対立劇が再現されるのか。製紙業界「第三極」の主導権をめぐる大王と北越紀州の激突は、しばらく治まりそうにない。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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