真冬に暖房が効かなくなったこともある。私のアパルトマンでは、建物の地下でわかした湯を各部屋のラジエーターに循環させ、暖める仕組みだった。この湯が回ってこなくなり、ラジエーターが熱くならなくなってしまった。暖房工事業者が、我が家に点検に来たり、地下で作業したりしたが、一向に直らない。パリの冬は零下に冷えこむこともある。洋服を重ね着したり、夕食を鍋ものにしたりして、なんとかしのいだ。ようやく修理に成功したのは、寒さも緩む3月、やはり問題解決に1カ月あまりかかった。
故障を直そうにも、問題解決に1カ月……
また、大人が3人入ればいっぱいになる小さなエレベーターが2機あったが、しばしば故障した。幸いすぐに救出されたが、閉じ込められたことも2回。帰国する3カ月前には、うち1機が動かなくなってしまった。
エレベーターは8階まで昇るものと、6階までのものがあったのだが、故障したのは我が家がある8階までのほう。修理業者が調べたところ、直すにはある部品が必要なのだが、昔の部品なので在庫がないとわかった。型を作って、その部品を作らなければならないので、3カ月以上かかるという。というわけで、帰宅する際には、6階までエレベーターで昇った後、2階分を階段で上がるはめになった。降りるときにはその逆をたどる。帰国のためにアパルトマンを引き払う日まで、ついにエレベーターは直らなかった。
顧客へのサービスを重視しない、フランス人の働きかたにも悩まされた。渡仏し、入居するアパルトマンを決めたとき、不動産会社の担当者が冬休みに入る前に、契約に必要な書類をそろえるよう要請された。書類が間に合わなかった場合、担当者が冬休みを終える2週間後まで契約できないという。休暇中の引き継ぎはない、とのことだった。夫と夫の会社のスタッフが大慌てで書類を準備し、どうにか担当者の休暇前に契約できた。
日常的に利用するスーパーや郵便局でも、従業員の休養は優先されている。
スーパーでは、お客に比して稼働しているレジが少ないうえ、商品を通すスピードが遅い。たいてい各レジに数人は待っている。行列が長くなっても、開けるレジを増やすことはほとんどなかった。それどころか、レジ係の休憩時間になれば、どんなに行列が長くても、そのレジは閉めてしまう。大半のスーパーは日曜休業なので、前日の土曜日は大混雑となる。私は一度、土曜日のスーパーに買い物に出かけて、二度と週末には行かないことに決めた。
郵便局に用事があるときは、30分くらいは待つ覚悟で出かける。スーパー同様、開いている窓口が少ないうえ、お客への対応はのんびりムード。やはり、どんなに行列している人が多くても、休憩に入る。行列に慣れているはずのフランス人も、「フーッ」と、ため息をついたり、「もう20分も待っているのに」とぼやいたりしている。日本在住のフランス人女性が、「日本の郵便局は素晴らしい。お客に順番を示した紙が発行されるし、サービスが手際よい」と称賛するのも当然だろう。
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