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フランシス・フクヤマが語る「世界と民主主義」 「アメリカは権威主義化に最も近い」と警鐘

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民主主義は危機に瀕している。

政治学者、米スタンフォード大学シニアフェロー フランシス・フクヤマ氏
フランシス・フクヤマ(Francis Fukuyama)/政治学者、米スタンフォード大学シニアフェロー。 1952年、米シカゴ生まれ。米国務省などを経て現職。「民主主義・開発・法の支配センター」所長。ベルリンの壁崩壊直前に論文「歴史の終わり?」を発表し、一躍注目を浴びる。近著に『リベラリズムへの不満』など(撮影:梅谷秀司)

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冷戦後の世界を見通し、自由民主主義こそ政治制度の最終形態だと論じた『歴史の終わり』。本書で注目を集めたのが政治学者のフランシス・フクヤマ氏だ。あれから三十余年、民主主義は危機に瀕している。世界はどう展開するのか。

 

──今の米国の政治情勢には「保守対リベラル」という単純な左右分断の構図では説明できない複雑さがあります。

今の米国政治は、本当に病んでいる。民主主義国家の中でも、米国は権威主義的な政治体制に移行する危険性が最も高いといえる。

変貌したのは共和党だ。1980年代、レーガン政権下の共和党は「小さな政府」を志向し、企業の側についてその権益と自由市場を守り、規制緩和をした。それが今や、多くの共和党員が公的権力により企業を規制しようとしている。白人労働者階級の多くが民主党から共和党支持に移ったからだ。

共和党を突き動かす多くのことが経済とは無関係

そもそも、共和党を突き動かす多くのことが経済とは無関係。ドナルド・トランプ前大統領は自らに起きた悪いこと以外語らない。「私は起訴された」「選挙は盗まれた」とね。彼に忠誠を誓えるかがリトマス試験紙になっている。

一方の民主党は都心に住む高学歴の白人が支持基盤だから、奇妙な話だ。民主党左派は人種、性別、性的指向などアイデンティティー問題に固執しており、20世紀に左派の原動力となった階級差の問題には関心がない。白人労働者より非白人を気にかけている。ガザ紛争でパレスチナ人を支持する左派のデモが湧き起こったのも、人種民族問題と捉えているからだ。

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