「最新の共通テスト」東大生も驚いた国語の超難化 漢字が持つ意味まで深く理解しないと解けない

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「食通な人」なんて言いますけれど、それは「いろんなところの食を知っていて、食に精通している、広く最初から最後まで物事を知っている人」という意味になります。

「共通」とはどれにもあてはまって通用することなので、最後の「3」の「全体的に行き届くこと」の意味になります。

ほかに同じような漢字を挙げると、「通説」がありますね。広くその説が知られていることを指します。

さて、どうしてこのような「同じ漢字の違う意味」を問う問題が増えてきたのでしょうか?

これは僕の勝手な考えですが、日本という国の教育において、語彙力の定義が変わってきている、ということなのだと思います。

この問題を出題している文部科学省の人たちは、「これからの学生は、同じ漢字・同じ言葉であっても、複数の意味があるということを理解しておく必要がある」と考えているのではないでしょうか。

昔から、小学校の低学年から漢字の書き取りをさせる国語の授業はとても多かったです。「100回同じ漢字を書く課題」というのもありましたよね。

しかし、現代ではネットの普及によって漢字の変換は簡単になっています。「この漢字、どう書くんだっけ?」と漢字がわからない言葉があっても、スマホを使えば検索できますよね。「コウケンって書きたいけど、ケンってどんな漢字だっけ? ああ!『献』か、そうかそうか」と。

ですから、「ひらがな→漢字」に自分で変換するための能力は、昔ほど求められなくなっていると言えるでしょう。数年前とは時代が全然変わっていて、今はもう、漢字の書き取りなんてできなくても生きていけるのです。そういう類の語彙力は、もういらなくなったと言えます。

ネット普及でも漢字の意味を理解する必要

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しかし、漢字の意味は、理解していないと使えません。ネットがどれだけ発展しても、漢字1字に含まれる多くの意味を自分の頭に入れておかないと、変換ができないのです。だからこそ、今回の問題が出題されたのではないでしょうか。

漢字の意味の理解、もっと詳しく言えば同じ漢字が持つ違う意味の理解ができている必要性が出てきてしまった。だからこそこのような問題が出題されるようになり、そしてこれからの漢字の勉強・語彙力の勉強は、このような問題がスタンダードになっていくのかもしれません。

2024年にも、共通テストが行われます。そこでもおそらく、この系統の問題は出題されるでしょう。どのような中身なのか、注目すべきかもしれません。

西岡 壱誠 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当

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にしおか いっせい / Issei Nishioka

1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。

そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。

著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。

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