ユニクロが「暖冬」でも独り勝ちできるカラクリ 激安衣料店から「世界のユニクロ」へ超絶進化
このアジアでのユニクロ人気について現地の人に聞くと、2010年代以降に出店が加速したアジアでは、消費者は最初から高機能高ブランドの衣料品店としてユニクロを認識していることになります。そもそも日本という言葉自体にプレミアム感があり、その日本で一番人気のアパレルブランドがユニクロだと捉えているのです。
そしてファーストリテイリングという企業としてみると、今やこの海外ユニクロ事業が事業の柱になっています。2023年度の売上高の成長率を見ると国内ユニクロ事業が7.5%の成長率だったのに対して、海外ユニクロ事業は29.8%の成長率です。営業利益は国内ユニクロが稼ぎ出す利益が全体の3割、海外ユニクロは合計で全体の6割の利益をたたき出しています。
そうなるとファーストリテイリングはトヨタと同じで、円安になると儲かる構造に変わります。2022年から2023年にかけて、日本は円安に苦しめられました。ニトリやサイゼリヤなど海外から輸入して日本で販売する企業は国内事業が苦戦したものです。
一方で海外での販売台数の比率が高いトヨタは、構造的には円安が1円進むたびに利益が約450億円増えます。トヨタでは2024年3月期の予想利益のうち実に1兆円が為替レートが円安に振れた影響だというのですから、輸出産業がいかに円安で儲かるのかがわかります。
そしてユニクロの第4形態も特徴として挙げられるのは、輸出産業型に事業構造が変わったことです。もちろん中国やアジア諸国の工場で縫製している部分は円安の恩恵は受けませんが、2本柱の1つである高機能製品は、東レから円建てで仕入れた素材を海外で売るほど円安で儲かる構造にあります。
日本で稼ぐには限界がある
さらに円安だけではありません。グローバル市場トータルの規模の効果で原価が下がるので、国内価格もそれにつれて下げることができるようになります。
これはあくまで肌感覚ですが、近年ユニクロの兄弟分であるジーユーの価格が相対的に高くなっている気がします。ジーユーはユニクロと違い、ほぼほぼ日本市場で店舗を展開しています。事業ボリュームの差が、商品コストに反映されているような気がしてなりません。
実は冒頭の話に戻すと、確かに11月のユニクロの国内既存店の販売結果は好調でした。売上高は前年比10%増で、その内訳としては客数が6%増え客単価も4%増えています。しかし8月、9月は逆にマイナスで、四半期で見ると売上高は横ばい、客数は3%ほどマイナスになっています。
そう考えると国内ユニクロの好調さは、実は海外ユニクロの絶好調さによるおこぼれかもしれません。国内ユニクロの価格は、国内消費者の支払えるぎりぎりのラインに到達し始めている一方で、ユニクロのビジネスは今では第4形態に進化して、今後の成長は海外ユニクロの状況をウォッチしていかないと見誤るようになってきた。これが長年ユニクロを観察してきた私の結論です。
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