赤字、リストラ、コンビニ撤退「本の物流王」の岐路 業界を騒がせた取次大手「日販」の幹部に聞く

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――一部の書店からは、「CCCとばかり新しいことに取り組み、ほかの書店が後回しになっている」といった不満も上がっています。

TSUTAYAは友好的なビジネスパートナーなので、言わんとすることはその通りかもしれない。TSUTAYAがほかの書店など、いろんな立場の人たちから毛嫌いされているのも知っている。

でも、TSUTAYAに寄り添うことを悪だとは思っていないし、僕らの戦略でもある。「TSUTAYAとは一緒に仕事しません」とは絶対言えないし、言わない。

もちろんCCC以外の書店にも、一緒に持続的な形をつくっていくため、今後もさまざまな施策を提案する。誠心誠意お付き合いさせてもらいたい。

陰で悪口を言われているのはよく知っているが、僕らは別に弱くなっているわけではない。取引構造や事業構造を変えて、取次機能を残していく。パートナーと組んで新しい事業もどんどん強化する。

「(日販がコンビニだけでなく)書店ルートの配送もやめる」という風説も立っているようだが、やめるわけがない。そんなことは絶対しないし、それを守るためにコンビニからの撤退を決断した。2~3年経ったら、「あ、そうだったのか」と答えがわかるんじゃないか。

文具では「日本一の卸」を目指す

――実際に9月、書店へ提案する業態のモデル店舗として完全無人書店の「ほんたす」を開業し、注目を集めました。

本屋を守るために、いろいろとチャレンジしている一環だ。

今、書店業が成り立たない要因は家賃と人件費。その人件費なしで成り立つのであれば、と既存の書店からもすごく興味を寄せられている。業態としてパッケージで販売できるだろうし、何より(出版物の)商流を作ることができる。本屋さんじゃないところと組む可能性もある。

「ほんたす 溜池山王」の外観
9月に開業した完全無人書店「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」(記者撮影)

――近年、出版物より採算性の高い文具の卸事業を強化し、一次卸となりました。7月には学研ホールディングスから知育玩具や文具のメーカーも買収しています。

本屋さんの中で、(収益の)けっこうな部分を文具が占めてきており、まだ伸びしろがある。コクヨや三菱鉛筆の社長とも、いろいろと話をできる関係になった。日販が取次を担う書店はもちろん、文具店や量販店などにも進出し、日本一の文具卸になりたい。

――中長期的な日販のグループ像をどのように描いていますか。

既存の取次事業が黒字で成立していて、新規事業も儲けが増えていくイメージだ。2025年度には、まあまあの(最終)黒字を計画している。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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