赤字、リストラ、コンビニ撤退「本の物流王」の岐路 業界を騒がせた取次大手「日販」の幹部に聞く

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――業界内では「日販が人員削減に踏み込んだ」という声も聞こえます。

10月に社内で早期退職支援を発表した。今、たくさん(新規事業などの)チャレンジはしているが、うちの将来を考えたときに、規模が大幅に拡大することはないだろう。それならば、事業に合わせた体制に変えていかないといけない。

対象範囲や規模、支援内容は開示できないが、新しい人生へと踏み出す社員のためにも、早めにキャリア支援をしてあげたほうがいい、という考え方だ。

日本出版販売の奥村景二社長
奥村景二(おくむら・けいじ)/1964年大阪府出身。1987年関西大学経済学部卒業、日本出版販売(現・日販グループホールディングス)入社。大阪支店長、関西・岡山支社長、主要グループ会社であるMPD社長などを経て、2020年から現職(撮影:今井康一)

――10月、日販が51%、CCCが49%を出資する商材流通の子会社「CX(カルチュア・エクスペリエンス)」が、CCCからTSUTAYAなどのフランチャイズ事業を受け入れました。一部の業界関係者の間では、「この動きを受けた玉突き的なリストラだったのでは」と見る向きもあります。

CCCからCXへの出向者は約500人に増加したが、それとこれとは関係ない。いろんなことを言われるが、たいがい間違っている(笑)。

TSUTAYA事業を受け入れた真意

――1986年に業務提携して以来、CCCと深い結びつきを持つ日販とはいえ、TSUTAYAなどのフランチャイズ事業を連結子会社で受け入れるメリットは判然としません。

去年ヤス君(CCCの髙橋誉則社長)が、CCCの構造改革に伴い新しいTSUTAYAにしていきたいと(合弁会社への事業移管のプランを)説明してくれた。僕もびっくりしたんだけど、「あっ、(その手は)あるなあ」と思って。

TSUTAYA店舗の様子
デジタル化などの影響で業績低迷が続くTSUTAYA。写真は7月に閉店した武蔵小金井店(記者撮影)

僕自身もMPD(合弁会社の旧社名)を担当していたことがあるが、CCCのフランチャイズ本部のSV(スーパーバイザー)から日販の営業、MPDの営業までがTSUTAYA店舗に訪問するなど、重複業務が発生していた。

こうした面の効率化はもちろん、「店舗での体験価値についても、一緒に考えればいいんじゃないの?」というヤス君の話はスッと入ってきた。

――収益低迷が続くTSUTAYAは、将来的な展望も厳しいと思います。日販の取次事業がTSUTAYAの店舗網に依拠している関係性から、業界内では「CCCから押し付けられたのでは」と邪推する声も上がっていますが。

(TSUTAYAなどのFC事業は)今はまだ赤字ではない。

ただ、レンタルなど既存事業はもっと悪くなっていくし、トレカなどの新しい商材、(コワーキングスペースの)シェアラウンジや(フィットネスジムの)コンディショニングといった新業態の収益拡大にも時間を要する。

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