日清食品「完全メシ」、独自技術駆使し狙う定番化 「カラムーチョ」が栄養食?可能にする技術とは

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ただ、同社は「あらゆる人が気付いたら完全メシを手に取っている」ような、さらに先の世界も見据える。そのためには何が必要か。まずは、やはり味の追求だ。例えば栄養素の味をスパイスなどで隠すと、どうしても味が濃く、辛くなってしまう。完全メシが目指すのは、通常品よりおいしいといえるレベル。藤野常務は「究極、お吸い物のようなシンプルな味付けの料理でも完全メシが作れたらいい」と話す。

完全メシの立ち上げに携わった日清食品の藤野誠常務。「カップヌードル」のブランディング経験があり、完全メシのマーケティングに生かす(撮影:梅谷秀司)

価値を伴った価格であると、消費者に理解してもらうことも必要だ。完全メシは通常品に比べ高価格。通常品の「日清カレーメシ ビーフ」は税込289円だが、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は税込429円と100円以上高い(値段は2023年12月1日時点の日清食品グループオンラインストア)。商品名は似ているのになぜ高いのか分からない、という人が少なくない。

価値の訴求に向け、今後はさらにテレビCMやウェブ宣伝を打っていく。藤野常務は、SNS上で話題となった「カップヌードル」のCMや広告を連発したマーケティングチームの統括経験を持つ。「広告宣伝にはまだまだ力を入れていきたい。完全メシの価値を伝えられれば、この市場は圧倒的に拡大の余地がある」(藤野常務)。同氏は現在、日清食品のマーケティング部も管掌しており、カップヌードルの次は完全メシの「定番化」に手腕を発揮しそうだ。

業界のルール作りにも着手

これまで他社で展開されてきた「完全食」や「完全栄養食」は、厚労省の基準に準拠しているものの、「完全」の解釈はさまざまだった。また、年齢や性別などによっても摂取すべき栄養素の量は異なるため、誰にとっての「完全」なのかが不明瞭という課題もあった。

こうした状況から今年7月、産学医連携で一般社団法人「日本最適化栄養食協会」が設立された。日清食品をはじめ、イオンやセブンーイレブン・ジャパンも参画する。協会では、年齢や性別、健康状態などに合わせた栄養の基準を定め、これに則った商品を最適化栄養食として認証していく計画だ。同協会の高島康一郎事務局長は、「例えば高齢者や低栄養気味の若年女性など、ターゲットを絞った基準を作っていきたい」と語る。

ただ、今のところ認証を受けている商品は完全メシだけ。基準を満たせば認証は受けられるが、おいしさを伴わなければ、消費者には受け入れられない。今後の市場拡大には、オープンイノベーションなど、日清食品だけの取り組みに終わらせない仕組みも求められそうだ。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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