赤字続く老舗・松竹、歌舞伎も映画も振るわぬ実情 コロナ禍で大打撃、4期ぶりの黒字復活なるか

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東宝に後れを取る松竹もアニメタイトルの歌舞伎化などに力を注ぐ。コロナ禍で離れた歌舞伎の団体客需要がすぐに回復するとは考えにくいが、意外にも髙橋社長は「来期は大丈夫なんじゃないかな」と楽観的だ。

背景にあるのはインバウンド需要の拡大だ。日本政府観光局(JNTO)の発表によれば、2023年10月の訪日外国人客の数は251万6500人(推計値)となり、単月ベースでは新型コロナの感染拡大以降初めて2019年の水準を超えた。

“若返り”で新風を吹き込めるか

松竹では、これらインバウンド需要を取り込むための施策として、「ナイト歌舞伎」という夜の歌舞伎公演を準備しているという。通常の歌舞伎は4時間ほどかかることが外国人観光客にとってのハードルとなっているため、ナイト歌舞伎では21時頃から1時間半程度の公演を想定しているようだ。

現状の歌舞伎座の外国人客の割合は2%程度といい、今後いかにこの割合を増やせるかがカギになる。

松竹の髙橋敏弘社長
5月に就任した髙橋社長。19年ぶりのトップ交代となった(撮影:今井康一)

前社長の迫本淳一会長は70歳で、髙橋新社長は56歳。19年ぶりの社長交代で、大きく若返りも果たした。

400年の歴史を持つ歌舞伎だが、髙橋社長は「伝統を守っていくということは、新しいことを入れていくことだ」と話し、歌舞伎の言語障壁を乗り越えるための生成AIの活用などにも積極的に取り組んでいく構えだ。

コロナ禍から明けた今、松竹は再成長への道筋を描けるのか。伝統維持と業績回復という新社長に課せられた責務は非常に重い。

※髙橋社長のインタビューを東洋経済オンラインにて12月6日に配信予定

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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