【産業天気図・11年4月~12年3月】海外需要に牽引され、半数以上の業界が震災打撃から「脱出」。焦点は中期の成長戦略へ
・上向き=前年同期に比べて営業増益が期待できる
・変わらず=前年同期と営業利益水準はほぼ変わらず
・下向き=前年同期に比べて営業減益が予想される
主要業種の見通し
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業種 | 天気 | 天気概況 | |
11年4~9月期(前半) | 11年10~12年3月期(後半) | ||
建設機械 | オーストラリア、インドネシアなど資源国からは好採算の鉱山機械に引き合い旺盛。欧州・中国の景気後退と、震災による部材調達難が懸念材料だが、主要企業においては増益基調が続く公算だ。 | ||
建設業 | 前半は、震災による中断や中止もあって公共分野が数量一段減、工期延長で足を引っ張る。後半は、民間分野の震災復旧や、省エネや耐震対応の工事が下支え。それでも被災地の町づくり計画が見通せず前期並みが精いっぱい。 | ||
紙・パルプ | 洋紙は市況に底打ち感が出てきたもの需要低迷は続く。板紙や段ボールは着実ながら、原燃料価格が圧迫する点は共通だ。日本製紙、三菱製紙が被災した関係で一部売り上げを伸ばす企業もあるが、その影響も前半いっぱいか。 | ||
化学 | 震災による直接的な被災やサプライチェーン寸断に伴う自動車や電機などの生産減退を受け、上期は一部の化成品需要が停滞。ただ、新興国向けの旺盛な需要は衰えていない。生産正常化に伴い下期は増勢に転じる見通し。 | ||
医薬 | 米国は主力製品の特許が切れる影響が続き、低調が想定される。だが国内は薬価引き下げがないうえ、主要企業の新製品投入が奏功し盛り返すだろう。震災影響は深刻なものはない。 | ||
人材サービス | 震災で一時落ち込んだが、影響は徐々に緩和。リーマンショック後の回復トレンドに復帰している。技術者派遣は上向き、製造派遣・請負も回復傾向(ただし、水準はそれほど高くない)だが、事務系派遣は足踏み感。 | ||
石油 | 前年の猛暑特需剥落に加え、震災後の自粛、経済停滞でガソリン等の燃料油が国内需要減少。需給緩んで精製販売マージン縮小し、元売り各社は軒並み営業減益へ。卸の燃料商社も需要減退が収益マイナス影響。 | ||
商社 | 資源価格高騰の追い風続く。生産権益を有する鉄鉱石や原料炭、銅などの「金属資源」、原油・天然ガスの「エネルギー資源」が収益拡大を牽引。総合商社5社のうち三菱商事、三井物産など4社が過去最高益を更新する。 | ||
ガラス・セメント | セメントは上期は震災影響で民需に減少懸念。だが下期に復興需要が出て、通年では微増に転換へ。各社とも増益。ガラスは上期に自動車用の減産影響受け、下期に正常化するが、通期では上期不振を補えず減益基調。 | ||
鉄鋼・非鉄 | 上期は自動車減産の影響と鉄鉱石や原料炭など原料価格高騰で減益。下期は自動車向け回復し価格転嫁も進展。製品市況も改善し、海外投資案件も稼ぎ収益尻上がり。震災復興需要は今期末から来期にかけて本格化の公算。 | ||
精密 | 期初はデジタルカメラや複合機ともに冴えない。半導体など部材の調達難が足かせとなる。ただ、タイや中国などアジアの需要は旺盛なため、物流網混乱の解消と機を一にして、尻上がりに回復するだろう。 | ||
海運 | 自動車船が前半陥没。大型バラ積み船は前半の運賃どん底。コンテナ船運賃の欧州下落痛い。燃油高が収益の足引っ張る。後半に運賃上向くが前半の落ち込みを補えず通期営業利益は前期比半減以下。 | ||
空運 | 期初は2割程度の旅客数減だったが、ビジネス客の戻りから除々に減少幅は縮小。特に本邦エアラインは日本人客比率が高めで、国際線は秋口以降は横ばいまで戻る公算。国内線も来年初頭には平常水準に戻る方向。 | ||
情報通信 | 携帯電話はドコモ、KDDIで基本料安い料金プラン浸透のマイナス影響続く。が、スマートフォン拡販でデータ通信収入伸び補塡。端末調達費削り業微増益。ソフトバンクはアイフォーン軸に好調持続。償却増こなす。 | ||
銀行 | 震災影響で増えた資金需要が長続きしない可能性も。貸出利ザヤは厳しく、前期に多い債券売却益の確保も難しい。震災影響による企業倒産で下期に与信費用が増える可能性も。メガバンクは東電向け融資の扱いが焦点に。 | ||
証券 | 前半は大震災後の不透明感を反映し、株式市況が低調で軒並み収益低迷。後半は、復興景気期待から株式市況が回復傾向。海外関連中心の投信販売も堅調。通期収益はなお低水準ながら、前年同期比では改善へ。 | ||
食品 | 前半は小麦、油脂などの原材料価格上昇が痛手。下期にはパン、即席麺業界で値上げ実施実現すれば前期並み維持。アジアや北米など原料高に合わせた価格転嫁が可能な市場に強い一部企業のみ増収増益基調。 | ||
家電・AV | 期初から秋口にかけて震災に伴うサプライチェーンの影響で商品供給に遅れ。下期に盛り返すが、国内のテレビ販売縮小と海外市場での価格競争激化のダブルパンチで各社とも営業減益となる公算。 | ||
半導体 | スマートフォン、タブレット端末需要が追い風。フラッシュメモリの東芝、DRAMのエルピーダは増益基調。装置メーカーも総じて堅調。が、ルネサスエレはマイコン生産の重要拠点が被災しストップ、大赤字の公算。 | ||
重電 | 電力などインフラ関連は新興国で増勢。後半は復興需要も見込める。が、前半は自動車関連が停滞。部品調達もネック。日立はHDD事業売却で利益水準目減り、東芝は半導体が利益牽引、三菱は主力FAに部品調達懸念。 | ||
電子部品 | 震災影響で部品調達に停滞が生じたが、影響は前半に小幅で出る程度。スマートフォンや家電、ノートパソコンなどの需要に牽引され、来春まで上向きの活況が続きそうだ。 | ||
自動車 | 震災で打撃を受けたサプライチェーンは想定以上の速さで復旧中。完成車工場も夏には正常稼働が見込め、秋以降は前半の遅れを挽回するためさらに高い水準の生産体制となるだろう。通期では前期並みの製販水準か。 | ||
造船・重機 | 前半は原発関連設備停滞や円高、部材調達難で減速。だが、後半は海外生産拡大など工程改善に自家発電機用エンジンなど震災復興需要加わり、上向き。新興国向けは前後半ともに堅調持続し通期では小幅増収増益へ。 | ||
工作機械 | アジア向け牽引で受注増加基調続く。北米は自動車関連が活況、回復の遅れていた欧州も上向き。震災による設備投資への影響は軽く、国内も堅調に推移しそう。一方、海外比率の上昇で円高対応が各社の課題に。 | ||
鉄道・バス | JR東含む関東系鉄道会社が苦しい。大震災や節電対応による運行本数削減、出控え・消費低迷から柱の鉄道、小売り、ホテル、レジャーなどで上期は客数減。下期は徐々に需要戻ってくるが、本格回復は来期の公算大。 | ||
不動産 | 震災による資材調達難が住宅分譲部門を直撃。従来から今期のマンション計上戸数は低水準が予想されていたうえに、工期遅れなどが追い打ちとなる。ビル賃貸部門の収益は底堅いが、主要デベロッパーの業績は通期では横ばいが精いっぱいか。 | ||
ソフトサービス | 金融などの大型案件は堅調だが、製造業の立ち上がりが震災の影響で後ずれ傾向。事業継続関連需要や節電でクラウド化やデータセンターは活発化。IFRS対応など潜在需要は大きいが、本格化時期が不透明で、当面曇り空が続く。 | ||
電力・ガス | 電力は東電・福島第一原発事故による余波で各社の原発が定期点検から再運転難しい状況に。火力の使用量増加や原油高などに伴う原料高が痛手。値上げでも追いつけず減益公算。ガスも前期猛暑効果から使用量減少。原料高を値上げで吸収できず減益傾向。 | ||
コンビニ・スーパー | 上期は猛暑効果剥落を、震災後の生活防衛支出がどこまでカバーできるかがカギ。買いだめもあり商品は値引きなしに売れているので利益は強含み。下期は復興需要の本格化を見込むが、大手と中堅以下の優勝劣敗は鮮明に。 | ||
アパレル | 震災直後の休業や営業時間短縮で抱えた在庫の処分で、上期中心に採算が悪化。電力不足でクールビズ商品は伸びても吸収しきれなそうだ。冬場も年末賞与の減少で消費が冷え込む懸念があり増益想定は描きにくい。 | ||
外食 | 法人需要に頼る居酒屋が大苦戦。震災前から熾烈な低価格競争が続いており、後半の回復も小幅にとどまる。日常食の牛丼、ファストフードは通年で好調。同じくファミリーレストランも、堅調な売り上げをキープする。 | ||
損保 | 震災関連の異常危険準備金が取り崩され、12年3月期の経常利益は劇的に改善する。ただ主力の自動車保険は停滞が依然続いており、海外展開やグループ内統合による構造改革などが急務。 | ||
放送・広告 | 企業のスポット広告が4、5月は前期比2ケタ減と急落したが、足元は減少幅改善進む。下期は復興特需で前期比超えもありうるがまばら模様か。大手広告代理店、テレビも視聴率好調な放送局に広告出稿が集中しそう。 | ||
化粧品・トイレタリー | 中国など新興国では順調に成長するが、国内の化粧品は低価格志向によって市場縮小が続くうえ、震災後の自粛ムードで一段と苦戦。日用品は液体洗剤など付加価値を付けることで、少子高齢化の中でも強含みが見込めそう。 |
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