日本人の給料が上がらない「物凄く根本的」な理由 椎茸と松茸でわかる「賃金が上がらない」深い訳
拙著『きみのお金は誰のため』の中では、主人公の優斗と投資銀行で働く七海が、同じ不安を抱いているのだが、それに対して、先生役の“ボス”が明快に答えている。
100年前に比べて、食費が所得収入対比0.29倍になったということは、食料の調達のために働く人たちの割合がだいたい3割になったことを示している。7割の人たちが失業したのである。
ところが、100年後の現代では失業者があふれているわけではない。生産者としての僕たちは、椎茸の採集や豆腐の生産のために大人数で働かなくてもよくなったから、携帯電話やパソコンを作る製造業に人材を投入できるようになった。
「雇用を守れ」という言葉は一見正しそうだが、雇用を守るだけでは、新しい分野に人が流れない。少子高齢化の進む日本では人手が足りない分野が増えつつある。例えば介護の分野では、毎年必要な人材が3万人ずつ増えると言われているし、IT技術者だってまったく足りていない。
インターネットなどの情報産業の分野ではかなり出遅れた。iPhoneやiPadなどの情報端末や、GoogleやYouTube、Netflixなどのアプリケーションなど、日本は海外製品に頼らざるをえない。教育の分野でも人手不足が深刻化していて、地域によっては公教育が崩壊している。
新しい仕事が増えなくても大丈夫な条件
しかし、さらに反論する人もいるだろう。「新しい仕事が増えなかったらどうなるのか」と。小説の主人公である優斗も、こんな問いをなげかける。
生産効率を上げることや「分かち合う」ことができなければ、賃金を上げることはできないだろう。小説の中では中学生でも理解していることだが、さて……。
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