ライオンズ「若手の"やる気"頼らない研修」の裏側 Z世代にも共通!「アスリートの特徴」を活かす

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「坂井先生、この前、若い選手が『YouTubeで紹介されているこの練習法をどう思いますか?』って言ってきたんです。

そういうときは好きなようにやらせて、1回失敗させたほうがいいんですかね?『YouTubeなんかあてにするな』と言うのも違う気がして……」

プロ野球の指導者研修で、50代のコーチから坂井氏はそう尋ねられた。質問を聞き、若い世代とのズレを感じた。

「それはつまり、あなたの中に『YouTubeに載っているものなんてたいしたものではない。どうせ、学ぶに値しないものだ。クソの役にも立たない』っていう先入観がありますよね。

我々が初めてインターネットに触れた20年前のコンテンツのクオリティはそうだったかもしれないけど、今のYouTubeは、日本のプロ野球界の常識より、はるかに高いレベルのものもあるし、下のものもあるんです」

坂井氏がそう返答すると、そのコーチはハッとした顔になり、「自分が先入観にとらわれていて、時代の変化に対応できてないってことですね」と返した。

そのうえで坂井氏に聞いたのが、どう対応すればいいのかだった。

若い選手たちが先輩に求めているのは“目利き”

「一緒にそのYouTubeを見て、『俺の目から見て、これは参考になると思うよ』とか『参考にならないよ』と伝えてあげることが大事だと話しました。

今、若い選手たちが先輩に求めているのは“目利き”です。

門前払いされたら次から聞きに行けなくなるので、結果的に彼らが“玉”ではなく“石”を使うことが起きてしまう。今の時代、指導者側の先入観や思い込みを排除していくことが、すごく重要です」

時代が刻々と変化しているからこそ、上に立つ者は先入観や思い込みをなくし、柔軟に物事を見られるようになっていく必要がある。

それができなければ、Z世代やさらに若い人たちとうまくコミュニケーションを図ることはできないだろう。

言うは易く行うは難しだが、野球チームの指導者や企業の経営者、管理職にとって、不可欠な能力となっている。

*1回目の記事:「西武ライオンズ『若手の伸び悩み』解消する新挑戦

*2回目の記事:「西武ライオンズ『獅考トレーニング』驚きの全貌」

*4回目の記事:「西武ライオンズ『"正しく走る"トレーニング』驚く全貌」

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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