アスリートやZ世代を対象にしたセミナーでポイントになるのは、どうすれば、やる気のない者に話を聞いてもらえるかだ。昨今、一般企業からもそうしたアプローチが求められていると坂井氏が語る。
「人の首に縄をつけて、どっちかに引っ張っていくような育成やマネジメントはもう通用しない世の中になっているからです。その前提に立って、あらゆることを再構成しなければいけない。
社員のやる気を当てにしてマネジメントするのは、これからの時代はうまくいきません。
やる気がない人にやる気を起こさせるのではなく、やる気がないままどうすればミニマムの戦力になってもらえるか。やる気がないなりに自分の役割や居場所が組織の中にできると、少しずつモチベーションにつながるかもしれません。
モチベーションにつながらなくても、少しずつ『やってもいいかな』『もう少しこうしたら、さらによくなるのに』とやる気がグッと首をもたげてくることもあります」
やる気は、第三者にはコントロールできない
やる気のない者を見捨てるのではなく、少しでも戦力になるように仕向けていく。坂井氏がそうした発想を持つきっかけは、社会人野球のホンダで監督を務めた長谷川寿氏に聞いた話だった。
「ビジネスの世界では組織の全員に対し、自分の持っている力を発揮することを求めますよね?
でも野球では、調子が悪い選手に『お前の力はこんなはずではない』と言ったところで調子はよくなりません。調子が悪い選手や、波に乗っていない選手も含めて、チームにいる選手たちをどう起用して今日の試合に勝つか。それが“采配”なんです」
やる気は他人の中にあるものであり、第三者にはコントロールできない。「天気をあてにするようなものだ」と坂井氏はたとえる。
監督や経営者の立場からすれば、チームがどんな状態でも勝利を目指さなければならない。「他者のやる気」という不確定要素の強いものをあてにする時点で、勝利に対して遠回りになってしまうわけだ。
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