劇団の記者会見で私を含む、多くの人が感じた「嫌なもの」の正体。それは「大企業のエリート社員が組織と自己の保身にひた走る姿」だったのではないか。
加えて「周到な準備を重ねた跡がうかがえるにもかかわらず、狙いがことごとく失敗している」ことも、いかにも「日本の旧態依然とした伝統的大企業の今」を象徴しているようで、どこか哀しさを感じさせる。
劇団が記者会見で犯した「エリートゆえの過ち」とは何だったのか。そして不祥事による会見で、企業が意識すべき「最も大切なこと」は何なのか。
かつてはテレビ東京の経済記者として数多くの記者会見に参加し、現在はPR会社の代表として企業広報を支援する立場として、ひもといてみたい。
「劇団発」が大半だったヒアリング調査
今回のヒアリングの対象となったのは、報告書によると「宙組所属劇団員(62名)、元劇団員(1名)、劇団役職員(理事長含む)7名、阪急電鉄役職員(4名)、故人ご遺族及び同代理人」。
「ヒアリング以外の調査方法」も「劇団から提供を受けた資料及び情報」「ご遺族から提供を受けた資料」「劇団役職員のメールデータ、ファイルデータ」。遺族以外、すべて「劇団発」だ。
週刊文春の報道によると、宙組の看板俳優がいじめの中心だったという。現役の劇団員が看板俳優を敵に回してまで、証言するだろうか。劇団や阪急電鉄の役職者にしても、自らの管理責任が問われるような証言や材料提供をするとは考えにくい。
現在、劇団と利害関係にないと思われるヒアリング対象は「元劇団員」の1名だけだ。これでは、劇団にとっての「不都合な真実」が、出てくる可能性も低いと考えるのが自然だろう。
それでも報告書には「いじめやハラスメントがあったのではないか」と類推できる記述はあった。
もし現役劇団員が「直接聞いた」と証言すれば、すぐに犯人と認定されてしまうのではないか。直接聞いていたとしても「伝聞」として証言するしかないだろう。もし劇団が弁護士に存分に事実究明できるだけの「舞台」を用意していたら、異なった証言も出てきた可能性もある。
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