サンマ漁獲枠、大幅減でも漁業者は「感謝」? 海外との争奪激化し、試行錯誤する日本
2013年に日本は不漁に見舞われ、漁獲量が15万トン弱に落ち込んだ。国際連合食糧農業機関の統計によれば、同時期に台湾は、日本の漁獲量を上回る18.2万トンを確保した。
サンマをめぐる争奪戦が激しさを増す中、今年7月には北太平洋漁業資源保存条約が発効する。サンマをはじめアカイカなど、北太平洋の公海で漁をする国々が協調し、漁獲制限などの資源保護に取り組むことを目的にしている。
日本をはじめ米国、韓国、ロシア、カナダ、中国、台湾が条約作成交渉に参加した。まず資源評価の方法を確立したうえで、国別の漁獲量などを議論するとみられる。
世界的に水産物の需要が増す中、サンマ漁をビジネスチャンスと見る近隣諸国を相手に、日本は交渉に臨まなければならない。水産庁は国内外に対して資源保護の推進をアピールしつつも、日本の漁業者のために少しでも多くの漁獲枠を確保できるようにするという、やっかいな舵取りを迫られることになった。
もっと減るかもしれなかった漁獲枠
そこで同庁は一つの対応策として、2015年漁期の漁獲枠算出方法を変更した。漁獲枠は、水産資源を持続的に利用できる漁獲量(ABC)に、北太平洋全体での漁獲量に対する日本の「漁獲割合」を乗じて、設定されてきた。
2014年期は、過去5年間の平均値(53%)を漁獲割合として使用した。だが2015年期は過去10年間の最大値(67%)を採用。資源量が減少する中、少しでも漁獲枠が減らないよう調整した。「外国の漁獲量が伸びていく中で、日本の漁獲割合は相対的に減っている。日本だけがまじめに我慢して漁獲枠を抑えると、今後のシェア争いにはマイナスだ」(水産庁・資源管理部管理課の猪又秀夫課長補佐)。
「もっと漁獲枠を減らされるかと思っていたが、われわれの希望する数字に近かった。配慮していただいたことに感謝する」(加澤副組合長)。過去最低の値でも、漁業者団体から感謝の言葉が出た背景には、こうした数字のからくりがある。
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