CSPはCPUやGPUなどの計算に利用する半導体を自社のデータセンターに格納して、言ってみれば「時間貸し」することで顧客から料金を得ているビジネスモデルになる。
顧客からすれば、使った時間だけ料金を払えばいいので、初期投資は最小限で済むことが特徴だ。このため、そこまで大規模にGPUを使うわけではない中小事業者にとっては、NVIDIA GPUを少ない初期投資で使うというニーズを満たすことができる。
それは「さらなる高みへの始まり」なのか
また、CSPが提供している「GPUの時間貸し」サービスの料金には電気代も含まれている。つまり、NVIDIAにとっては初期投資と消費電力という2つの問題を覆い隠して、ユーザーに対して「高性能」だけをアピールできるという点で大きな意味があるということだ。
しかし、CSPとの協業はNVIDIAにとって「諸刃の剣」になりかねない戦略であるのも事実だ。というのも、NVIDIAの強みはハードウェアよりもソフトウェアにあるというのは以前の記事(NVIDIA「好調すぎる業績」、その軌跡を読み解く)で解説した通りで、CUDA(クーダ)というGPUを汎用演算に利用できる開発環境を他社に先駆けて提供してきたことで、AI=NVIDIAという構図を構築してきた。
しかし、CSPの各社が用意しているAI開発ソフトウェアは、こうしたNVIDIAの強みを見えづらくしてしまう可能性がある。AI開発ソフトウェアは、CUDAのような開発環境の上に覆いかぶさる形になっているため、開発者からはそれを意識する必要がなくなるからだ。
その結果、開発者はNVIDIAのGPUで演算しているのか、それとも競合他社の半導体で演算しているのかは意識しなくなり、長期的に見てNVIDIAの市場シェアが減っていくという可能性はある。その意味で「諸刃の剣」なのだ。
しかし、短期的にはCSPでの採用が増えることで、NVIDIA GPUの需要はより高まっていくことになるだろう。それが「さらなる高みへの始まり」なのか、それとも「終わりの始まり」なのかは、まだ見えてきていない。
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