そこで先のザルジニーの発言となる。数カ月にわたる攻撃は人的被害を増大させただけで、本来の目標を到達できず手詰まり(Stalemate)の状態を作り出したというのである。
もちろん、ザルジニーは2024年に行われる次期大統領選の有力候補と目されている。その牽制ともとれる発言に対して、ゼレンスキーはいらだち、現在ウクライナ政府には内紛の種が蒔かれているといわれる。
ザルジニーとゼレンスキーは2022年秋の作戦においても、対立していたといわれる。後退するロシア軍を深追いしてロシアを殲滅せんとするゼレンスキーに対し、深追いはせずに春を待つという慎重なザルジニーとが対立していたというものだ。
ゼレンスキーは西側の援助を勝ち取るために戦果がほしい。しかし、軍はそれだけの体制が整っていない。その軋轢の中で対立が起きたというのである。
ウクライナで生じる内紛の火種
本来ならば、2024年5月にウクライナでは大統領選があるはずである。2023年10月に出たアンケートでは、ウクライナ人のゼレンスキーへの支持率は急激に下がっている。
90%の人々はウクライナの勝利を信じているというのだが、長引く戦争に厭戦ムードも出ている。ゼレンスキー政権は「戦争」という自転車に乗った政権であり、自転車が停止すると倒れかねない。
唯一の頼りが西側からの援助であり、それによって戦争を支えるしかない。ウクライナ戦争が代理戦争であるかぎり、ゼレンスキー政権は存続するのである。
しかし、この戦争をアメリカの代理戦争ではなく、スラブ人同士の問題として考えると、この長引く戦争はある意味同士討ちでもある。その意味で停戦を望む声も大きい。
停戦を望む大統領候補(ザルジニーのような強力なライバルなど)が出現すれば、意外と支持を得る可能性は高い。一時期、本命と言われていたキエフ市長クリチコの復活もあるかもしれない。
アメリカは最近ロシアとの停戦の話もちらつかせ始めている。その流れで、ウクライナ戦争の手詰まりという言葉が出たのである。
最近アメリカやヨーロッパのメディアの関心は、完全にイスラエルとガザとの戦争状況に移っている。メディアは、その中で少しずつウクライナ戦争の真実を暴露し始めている。
状況を知らず突撃だけを命じるゼレンスキーに対する批判の声も軍部に出ている。それが先のザルジニーの発言となったのである。
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